10・6 幸せな生活 (2007/10/08)
なんとか貸し舟屋に話をつけパラチ湾の舟の周遊をすることになった。その舟の操縦者はおっとりとした顔つきの見るからに、性格のよさそうな男であった。聞くとまだ24歳とのことである。 「もう、結婚しているの?」 「結婚しているよ。もう5歳になる男の子がいるよ」 ということは19歳のときに結婚したことになる。 「そんなに早く結婚して、失敗したなんて思わないの?」 「この辺の人間は結婚するのが早いんだ。 13、14才のときに散々あばれたからね。もう今は落ち着いているよ。仕事も今のところで、12年働いていて信頼されてるしね。この仕事は気に入っているよ。彼女は今19歳でね、プロポーションも抜群なんだ。もう家も自分のだし、今の生活に十分満足しているよ」 島が点在するパラチ湾の濃緑色の海を眺めながら、彼は微笑んだ。 44歳、未だに惑っている自分が情けなくなってしまった。いつか彼のように、すがすがしい笑顔を人にできるようになりたい。
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