3・17 牛丼 (2010/03/18)
海外で生活していると、日本に対する思いが強くなる。日本の製品の良さがテレビで放映されていると自分のことのように嬉しいし、トヨタのリコール問題や冬季オリンピックで金メダルがひとつもない記事を読んだりすると、がっかりしてしまう。 最近、日本の牛丼屋さんが、サンパウロにできたということを聞いて、ひそかに、行くのを楽しみにしていた。数年前からラーメン屋なんかもでき始め、がんばっているので牛丼もという気持ちが強かった。息子に、「どうだ、日本の食べ物はおいしいだろう!」と言って自慢したかったし、ブラジル人に日本独自のファーストフードのおいしさを知ってほしかったからだ。 たまたま、友人と行ってたべているうちに、がっかりを通りこし腹立たしくなった。友達いわく、店の雰囲気は明るく、いかにも日本のファーストフードの店という感じがして、最初のイメージは良かったのだが・・・。 メニューを見ると、牛丼ファジョアーダ(半分が牛丼で半分がブラジル名物フェジュアーダ)があったりして、おっつなかなか面白いじゃん!と思ったが、料理を食べてがっくりしてしまった。注文したのは、「牛丼トラディショナル」の大盛り。牛丼にサラダ、トン汁がついたものだ。15レアル(750円)。ブラジル人の男性の給仕が持ってきた(日系人の給仕は一人もいない)牛丼を見て、友人が「日本の得盛りぐらいありますね」とちょっと驚く。みかけは日本の牛丼とほとんど変わらない感じである。 一口食べるとかなりしょっぱい!!。友人に聞くと、やはりしょっぱいという。ブラジル人に合わせた味付けにしているとのことであるが、どうやってもこれはしょっぱすぎる。 今、ちょうど「包人味平」というマンガを読んでいるのだが、そのシーンに味平の塩辛くしすぎた味付けに、料理人の長老が、味平に「一皿全部食べてみろ」と言う。一皿食べてみて、その味付けの塩辛さに愕然としている味平に長老は「おまえは、まだ料理人の舌ができていない」と言い放つ。ちょうど同じようなことがこの牛丼に言えた。いや、そんな生易しいものではなく、一口目からしょっぱかった。3分の1ほど食べたところで、あまりのしょっぱさに腹が立ってきた。よくこんな味付けで、日本側は許したものである。ご飯がパラパラなのも、汁だく(汁が多い)も我慢するが、このしょっぱさだけは許せない。いくらなんでも、ブラジル人の舌をバカにしすぎである。もう、残そうと思ったが、意地汚さが出て、我慢して無理に全部食べてしまった。むむむ情けない! もしかしたら、たまたま今日が塩辛かっただけかもしれない、そう思い直し、食器を片づけにきた、ブラジル人の青年に、「僕には、ものすごくしょっぱかったけど、いつもこの味なのか」と聞くと「同じ味だ」と言い切った。まあ、僕の聞き方も毒があったのかもしれないが、本当に今後も同じ味だというのなら、もうどうしようもない。来ることはないだろう。帰り際に日本人の責任者がいれば、文句を言ってやろうと思ったが、残念ながらいなかった。 しかし、情けない。日本の大きなファーストフードの企業が、こんな味付けしかできないなんて。もちろん、日本人に合わせた味付けを求めるつもりはないが、限度というものがある。最近、ブラジルにも進出する日本の企業が増えたそうであるが、日本じゃないからブラジルだから適当でいいやなんて思わずに真摯な気持ちで責任を持って取り組んでほしい。それは、たとえ名前だけを貸したにしても言えることである。
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