3・14ファベーラ再びⅡ (2013/03/15)
タニアの小屋から、少し入った所に、ドナ・ナターリャの家があった。この家には家族5人が住んでいるが、2人は精神的な問題がある。 ファベーラの人たちはノルデステ(東北伯)出身の人が多く、サンパウロに出てくるにあたって、親族を頼って出てくるのが一般的である。小さなファベーラに行くと、そのファベーラに住むほとんどの人がと親族と言うことも珍しいことではない。これだけ近くに親族が多いと、次第に血が濃くなり精神的に問題がある子供が多く生まれる。もしかしたら、東北伯の人々は近親者同志が結婚したり、一緒になることにさほど抵抗がないのかもしれない。そう思ってしまうほど、ファベーラには精神的に問題を抱える人々が多い。ドナ・ナターリニャの二人の娘は、もう40ちかいが、働くことも一人で住むこともできない。二人とも顔には狂気の相がでており、もし、今の日本だったら施設に入っている段階であろう。 ボランティアのヨランダさんが家のドアを叩くと、上の娘がドアを開けてくれた。奥にいるドナ・ナターリャに促され家に入ると、プーンとアンモニアの匂いが鼻を衝く。匂い以外はブラジル人の一般的な家である。部屋はきれいに片づけられ、いろんな電気製品もそろっている。この部屋の中にいれば、ファベーラの中にいることを忘れてしまうほどである。ドナ・ナターリャの年金をはじめ、二人の娘におそらくいろんな補償を政府からもらっているのだろう。 奥の部屋にドナ・ナターリャがベッドに横たわっていた。明るい彼女は、いつも訪れる度に気持ち良く接待してくれる。今日もニコニコしながら体を起こして握手してくれた。最近、血管が詰まってしまい、足の指を切ってしまったという。この家族は糖尿病家系でもあり、上の息子は最近目の手術をしたばかりらしい。二人の娘は、何もわからないことを利用されて、心ない男にレイプされたこともある。そんなことを聞いているとだんだん辛くなった。 階段の途中に立って、じっと下の娘が立って僕らが話している様子を見ていた。そんなに長いことじっと無表情なすわった目で見られると居心地が良くない。こんなちょっと異様な家の中でも、健康が良くないにもかかわらず明るく暮らしているドナ・ナターリャの顔を見ていると救われる。
|