10・24 パウリスタのサキスフォン吹き (2014/10/24)
ジウマ候補とアエシオ候補の選挙運動員がセントロで喧嘩になり大騒動になりかけたそうだ。まったく民度が低いというか、もう、そういうレベルじゃないのかもしれない。 サンパウロのシンボル、パウリスタ大通りでも応援合戦が繰り広げられているかと思い、わざわざパウリスタ大通りまで足をのばしたが、まったくそのような様子はなくがっかりしてしまった。 しかし、なかなか面白い出会いや見ものがあり、それなりに楽しめた。アウグスタ通りとの交差点近くのショッピングセンター前には、針金細工やアクセサリーを売るヒッピーで一杯であった。セントロ付近では、警察が路上での無許可販売を厳しく取り締まっているのにヒッピーならなぜよいのか? この辺がよく解らない。もっとも、セントロのレプブリカ前には、同様のヒッピーやアフリカ人が一杯いるにもかかわらず取り締まりを受けていない。手製のものを売るのは良いのかもしれない。そうなると、ポップコーンやその他の食べ物を売る露店がダメなのはどうしてだろう? 税金を払っている商店との絡みもあるのだろうが、不公平な感じがする。今度、友人の警察官にその辺を聞いてみなくては! ブリガデイロ通り方面に進んでいると、サキソンフォンを吹くおじさんがいた。ちょっとコワモテタイプで写真を撮らしてもらおうかどうしようかかなり迷った。あまりに雰囲気が良くて、かっこいいので、撮りたくてどうしようもなくなり、撮ってもいいか聞いてみた。僕は人見知りが激しいので、知らない人に話しかけるのは大の苦手であるが、興味を感じる人には、調子の良いときには結構ずうずうしく頼める。この辺は時に自分でも驚くことがあるが、ちゃんとした写真を撮るには、許可を得てないと撮れない。それになにより、僕自身が隠し撮りをされると腹立たしいから、できるだけ了解はとるようにしているのである。何故か最近、写真を撮られることが多くなったような気がする。何のために撮るのかわからないで、知らない人間に撮られるというのは嫌なものである。 「写真とってもいいですか? 僕のブログにのせたいのだけど」 「いいよ。いいよ。お好きなように! こんな人が通るところで演奏しているのだから、撮られることは一切きにしてないよ」 サングラスをしていたから、遠くからではよく解らなかったが、ときおりサングラスがずれて見える目はいかにも柔和である。 「日本人?」 「そうです」 「昔、アサイっていう日系人の恋人がいたんだ。いい娘だったな~」 「へ~」 結構、お年のようであるが、サクッソンフォンから出る音にはエネルギッシュな力があった。何枚か撮らしてもらい、目的のスーパーに向かった。途中にも2,3のミュージシャンが演奏していて人だかりができていたが、あのおじさんのような惹かれるミュージシャンはいなかった。 ブライガデイロ大通りの大型スーパーでお目当てのコーヒー、3コラソン・プレミアムを4つ買い込んだ。もっとお金を出せばおいしいコーヒーはいくらでもあるが、500グラム400円ちょっとでこのレベルの味なら僕には十分であった。たぶん大型スーパーなら何処にでも売っているのだろうが、僕の知っている所ではこのスーパーにしかなかった。 帰り道々考えていると、ああ撮ればよかった、こう撮れば良かったと、後悔する気持ちでいっぱいになってきた。再びおじさんのところに戻ってみると、運の良いことに、まだ吹いていた。 「あれ、戻ってきたの?」 「また、撮らせてね」と言ってコーヒー1パックを募金箱としているサクソフォンケースに置いた。 「家内が喜ぶよ。 コーヒーを飲むたびにあんたのことを思い出すよ。ありがとう」嬉しそうな笑顔を見せてくれた。どういう人生を送ったらこんないい笑顔ができるのだろう。それくらいいい笑顔であった。 「最近はね、すっかり年取っちゃって、長い間吹けないんだ。タバコもすっているしね」 またしばらく何枚かの写真を撮った後、別れを告げた。 「いつかどこかでまた会えるだろう。幸運を」 すぐ横に、なんとなく危なそうな青年が座っていた。余計な事だと思いながら 「ちょっと危なそうだから気を付けてね」 彼はチラリと青年を見ると 「大丈夫、大丈夫」と言って笑った。確かに最初から人を疑うことはよくない。彼の様な人を疑うことをほとんどしない無心な人は、僕なんかの様な疑り深い人間と異なり襲われる可能性はずっと少ないだろう。 久しぶりのパウリスタは、見るもの見るものが目新しく感じられ面白かった
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