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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2009年の日記  (最終更新日 : 2010/01/01)
8月の日記・総集編 縄文のマリア

8月の日記・総集編 縄文のマリア (2009/09/02) 8/1(土)記 ダビング・フィールド

ブラジルにて
ブラジル出家まで、秒読みとなった。
残務・雑務。

ありがたいことに今度の訪日では各地で、新旧長短さまざまな拙作を上映してもらえることになった。
まだDVDを焼いていない旧作のDVD焼き、なぜか素材が見当たらなくなっている作品のバックアップ等々。

来週の今頃は、縄文界とは。
アマゾンと縄文。
空間移動と時間旅行の開始。


8/2(日)記 しずく辛子

ブラジルにて
日曜のフェイラ(路上市)へ。
いろいろなトウガラシの瓶詰めを売っている店がある。

お、ここにあるではないか!
先日、山の宿で親しんだ「しずくちゃん型」トウガラシの酢漬け。
こちらでは「くちばし状」と形容される。
これがさほど辛くなく、ラッキョウ感覚で楽しめた。
どうやらミナスジェライスの特産らしい。

購入。
開けにくいプラスチックの蓋をカッターで開封。
試食。
うん、あの味。

新大陸のトウガラシ文化の奥深さと地域性を、味覚で再認識。


8/3(月)記 この期にイヤハヤ

ブラジル→
ブラジル「出家」当日だというのに、いらぬ用事が増える。
ついイラついてしまうのは、未熟・不徳のいたすところ。

サイアクなのは、こちらのさる日系団体に頼まれた原稿。
先月下旬に電話をしてきて、月末までに急ぎで、という。
もちろん原稿料など出るべくもない。
日本語で、メールの添付ファイルで送って欲しいとのこと。
旅先で書き上げたのが、この原稿。

さて7月がまだ何日もあるうちに担当者のメルアドに送ったものの、添付ファイルがOKかどころか、届いたかどうかの連絡もない。
こちらから確認の電話を何度か入れるが、本人はおらず、返しもないまま。

こんな団体や担当など、今後かかわる気もないが、こちとら頼まれて引き受けたことには忠実に、という損な性分である。
今朝、ようやく担当を電話で捕まえる。
メールは届いている。
ファイルは自分のパソコンが日本語に対応していないので、真っ白。
団体の人は「みな」パソコンが日本語に対応していない。
印刷して郵便で送るか、原稿をスキャンして送ってほしい・・・

なんですぐに連絡してこないんだ!
日本語対応のパソコン環境のない連中が、「原稿用紙3枚」の日本語原稿を依頼してくる。
郵便入手後は、スキャンして写真扱いで冊子に印刷すんの?

・・・、といったようなクダラナイ不愉快な用事が増えちゃって。


8/4(火)記 空の凋落

→アメリカ合衆国→
ブラジルの航空会社の日本路線が廃止されて以来、主に日本の航空会社を訪日に使っている。

今回のサービスの低下には驚いた。
これまでは食事の際、食前のドリンクとスナックのサービス、トレイ配布時のドリンクサービス、そしてドリンクのお代わりのサービスがあった。
それがトレイ配布時にドリンクが提供されるだけになった。
ドリンクに関しては、サービスが3分の1に減ったわけ。
客室乗務員は労働量が3分の1に減ってお喜びだろう。
その他にもサービスの退行が目立つ。

安全飛行だけは、退行させてくださらないで。
お願いしますね、日本航空さん。


8/5(水)記 元気ないぞ、日本のみどり

→日本
成田で降機直前の、客室乗務員のアナウンス。
「8月8日から・・・」
え、なにがあるんだ?
「高校野球が始まります。」
そうか、それほどのイベントなのか。
さすがに英語とポルトガル語では、これは省略されていた。

猛暑を覚悟していたが、意外と生ぬるい感じ。
帝都に向かうリムジンバスの車窓。
なんだか、夏草に迫力がない。
夏の日本を訪れて、まず圧倒されるのが植生からみなぎりあふれるパワーなんだか。
直前に、バイーアあたりの強烈なのを見ちゃったせいか?
仮の宿に向かうタクシーの運転手によると、梅雨が明けたばかりだという。
それにしても。


8/6(木)記 俗のパワー

日本にて
東武東上線で、ふじみ野市の上福岡駅へ。
29日の上映会の会場下見と打ち合わせ。

上福岡は、「アマゾンの読経」の藤川信弘師が伊豆大島移住まで住まれていたという奇遇。
上福岡の繁華街のパワーに圧倒された。
駅前にパチンコ店が4軒。
新台入れ替え、ティッシュ配りで競争を繰り広げている。

ティッシュの入手率は、渋谷より高い。
パチンコ店の軒間に、「東大合格○○人」といった学習塾が。
商店では、あちこちで客と店員の会話が弾んでいる。
俗のパワーがみなぎる街。
明日からの巡礼に使うキャリングケースも、大きさも値段も手ごろなのを上福岡で買えた。

どんな上映会になるか、楽しみだ。


8/7(金)記 北上開始

日本にて
人気のない夏の未明に想うは、アンコール遺跡群のこと。

潜伏先から這い出し、ネカフェ経由で鉄路、北に向かう。

まずは雨の仙台。
佐藤工房で「フマニタス」の直し作業。

夜は霧の八戸。
懐かしい顔ぶれと再会。
蕎麦焼酎蕎麦湯割りをロックで。

明日から待望の六ヶ所村合宿上映。


8/8(土)記 六ケ所開花

日本にて
15年ぶりの六ヶ所村。
数日前にヒグラシが鳴き、もう秋だという。
こちとら、ソノヒグラシ。

今日・明日と「花とハーブの里」で連続上映。
上映会の他に、「あしたの森」とテレビクルー、「ピース・サイクル」の銀輪部隊がひしめき合う。
混成部隊相手の上映というのも、いい修行になる。

面白い出会いが錯綜。
女将の菊川さんの活動とお人柄の賜物かと。


8/9(日)記 六ヶ所村でアカハラに遭う

日本にて
さながらギアナ高地の、霧の六ヶ所村。
午前中はYAMさんと近くを踏査。
未登録の縄文遺跡確認作業ぐらいのノリで始めた。

女将の菊川さんが、かつて縄文土器片を見つけたという方角を目指す。
行く手にはクマザサが繁茂して深い谷が入っている。
アクセスも表面採集も難しいと判断。
畑沿いの稜線を歩くことに。

ナメクジ・粘菌捜索に変心。
手ごろな藪がある。
腐葉土をめくり、倒木を動かす。
倒木の下に、トカゲ状の生物がいた。
YAMさんが、なんと手づかみ。

よよっ!
背部は黒褐色だが、腹部が鮮やかな紅色をしているではないか!
イモリ、サンショウウオを思わせるが、近くに水場は見当たらない。
ひょっとするかもしれない。
タッパーに収めて地元の郷土資料館に持ち込む。
しかし、ひとりだけだという女性スタッフに気持ち悪がられるばかり。
世界的に有名になってしまったこの村では、希少生物への対応どころか、生物同定のシステムが存在しないことを知る。
それでいて資料館には動物の剥製が正面に展示してある。
核開発側の環境認識レベルがよくわかる。

同宿の地元メンバーから「アカハラだろう」と教えてもらう。
アカハライモリ。
両生類だ。

ググってみて、環境省レッドリストに準絶滅危惧種として記載されていると知る。
YAMさんは花とハーブの里に、ふたたびアカハラを放した。


8/10(月)記 山口で夏に遭う

日本にて
東京の隠れ家で装備を交換、土産品を補充。

つかの間の帝都、旅立ちは豪雨。
夏休みの「ひかり」を乗り継いで、山口へ向かう。
徳山あたりから、陽光に輝くみどりが現れた。

青森で秋来ぬと知り、山口で夏の訪れを知る。


8/11(火)記 黒い来客

日本にて
90年代の拙作の舞台ともなった山口の山村にて。

深夜、ガサゴソという音が。
ゴミ箱のあたり。
ネズミの類ではなさそう。
ゴキブリか。
藪蚊よりいいか。

明るくなってから、音源を調査。
黒くて、平たい虫・・・
おっと、こりゃあクワガタのメスではないか!

青森では、思わぬクワガタのたまり場の話を聞いた。
山口で現物、しかも女性が寝室まで訪れてくれるとは。
手も握らず、ごめんなさい。


8/12(水)記 縄文のマリア

日本にて
山口から鉄路、東京へ。
青森で出会った秋田の方にいただいた本を読み耽る。

と、車中で思わぬ出会いが…

一連のことの意味を考えずにはいられない。
縄文の聖母に感謝。


8/13(木)記 夏焼けの霊峰

日本にて
今回の訪日で、ヤマ場の綱渡りスケジュールに入る。
羽田から高知に向けて飛ぶ。

満席のフライト、通路側。
通路側からでも、主翼越しに頭を雲の上に出した霊峰富士が鮮やかに拝めた。
思わず、背筋を正す。


8/14(金)記 巨龍再開眼

日本にて
今回の訪日の、最大のヤマ場。

高知佐川で「ブラジルの土に生きて」上映と、シンポジウム「水野龍とは何者か」。
いやはや、よろしかった。

最大の反省は、設定時間が完全に押していたため、上映後のひと言を割愛したこと。

30分押しのシンポの閉会を待たずに、タクシーで龍馬空港に急行。
間に合った。

羽田からリムジンバスで、横浜へ。
伊藤修さん主催の「アマゾンの読経」奉納オールナイト上映。
これも実現するとは。

まさしくなにかに吹かれて、身を任す。


8/15(土)記 盆に中隅

日本にて
おかげさまで、奉納オールナイト上映、つつがなく終了。
お付き合いいただいた皆さんに感謝。
「アマゾンの読経」キーパーソンの登場人物が来場してくれて、新たな秘話を披露するというサプライズも。

今回の訪日は、ナメクジ=家なし状態。
港港にオンナたちが、とは程遠い。
コインランドリーとクリーニング屋出しが本日最大の課題。
お盆休みは計算外だった。

小説家の星野智幸さんに新たにアップしていただいた「ブラジル学と寅さん」をご紹介。
http://www.hoshinot.jp/okamura/nakasumi2.html
アップが久しく滞っていたのは、ひとえに岡村の怠惰の故です。

人気のまばらな帝都の盆に中隅さん、橋本先生、肉親らを偲ぶ。


8/16(日)記 廃墟とナメクジ

日本にて
千葉・我孫子で岡村作品研究上映会。
テレビディレクター時代の作品から、最新小編「夏草のミッション」までを遺跡をキーワードに解こうという試み。
まことに意欲的な企画に感謝。
僕自身がいろいろな気付きをさせてもらう。

今日から3日連続で関東各地にて巡礼上映。
土浦のビジネスホテル泊。


8/17(月)記 2階の蕎麦屋で

日本にて
かつてタモリのグループの歌で ♪蕎麦屋の2階で、ソバヤソバーヤ♪、といったアフロな蕎麦屋賛歌があった。
今日は水戸にある2階の蕎麦屋!
サウスアメリカンテイストのお店「にのまえ」さんで貸切上映。
http://r.tabelog.com/ibaraki/A0801/A080101/8002373/

マスター夫妻とはブラジルで知り合った仲。
蕎麦のクオリティは茨城が世界一、といったウンチクを聞いてはいたが、まさか自ら手打ち蕎麦屋を始めるとは。

常連のお客さん、学生さん、さらに珍客たちが集う。
マスター夫妻のアットホームなもてなしが場を和ませてくれる。

皆さんにはブラジルのナショナルフード・フェイジョアーダを、岡村には世界一の蕎麦を。
見事にうまく、しかも気取らない親しみやすさ。
さっそくリピートしたくなる味。

マスターはアルゼンチンワインの求道者でもある。
移民映像作家は茨城産の日本酒数種をいただくが、いずれもよろしかった。

2階の蕎麦屋で社会人の先達たちと、学生たちがワイのワイのと盛り上がっている情景が、なによりの肴。


8/18(火)記 大島迷宮散策

日本にて
水戸から常磐線鈍行で上京。
竹芝港より伊豆大島へ。

佐々木美智子さんと再会。
今度の佐々木さんのお宅あるあたりは、べらぼうに濃い。
沖縄の離島の集落に迷い込んだようだ。

生物相といい、文化相といい…

元町港のJAZZ喫茶ZENにて、佐々木さんの友人知人を集めて「あもれいら」②を上映。
ほんの数人ぐらいのつもりが、この島にこんなに人がいたのかと思うぐらいの人の入り。

「あもれいら」上映中に富士見観音の父、藤川さんを感じて、胸が熱くなる。


8/19(水)記 観音沢木佐々木文庫

日本にて
早朝から営業の御神火温泉で汗を流す。
佐々木美智子さんとバスで富士見観音堂へ。
湿気がすごい。

観音堂の、蔵書。
かつてブラジルで日本語の本の図書館を作りたいと望んだ佐々木さんに、坂の沢木耕太郎さんが数万冊の蔵書を提供してくれた。
日本からブラジルに渡り、サンパウロ州内を数回移動して、佐々木さんが帰国時に選りすぐって持ち帰ってきた本ども。
それに佐々木さん、藤川さんの蔵書が加わった。
日本語の本の歩んだマイレージ数としては、稀有の部類の本たちだ。

決して本フェチまでいかない僕あたりでも、思わず手の出る好著・奇著揃い。
「本を読みに来る人がいなくて。あたしは死ぬまでに一冊でも多く読みたいんだけど」と佐々木さん。
若者たちよ、観音堂の掃除と観光もとってもありがたいが、本の背表紙もみてみるのも悪くないぞ。
某自称移民研究者みたいなカッパライは犯罪だが。


8/20(木)記 夏の博物

日本にて
移動と上映の合い間を縫う。
買い物・打ち合わせ等と展示会のハシゴ。

銀座松屋の熊田千佳慕展に行ってみた。
昆虫画・生態画で知られる人。
人がわんさかわんさか。

大半が「おデパート」層のご婦人方。
通常は虫環境を「無視」するか、お宅の中に虫が入ろうものなら問答無用で抹殺を図りそうな人たち。
それだけに、大人への環境教育としても熊田画伯の仕事が注目されるのはうれしい。

熊田ワールドには、息を呑むばかり。
多少の無理をしても見ておいてよかった。


8/21(金)記 郷愁は灼熱のなかで

日本にて
山口宇部空港から下関経由で小倉へ。
ホテルでチェックインの後、今宵の上映会場、ギャラリーSOAPを探す。

ようやく発見、会場に上がると初対面の主催者・宮川さんがギャラリーの床に水をまいている。
昨日からクーラーが壊れてしまったため、打ち水をしているという。

今日の上映会では、話をつないでくれた地元のジャーナリストだけが唯一、面識のある人。
エンターティナーとしての力量が問われるというもの。

上映作品は「郷愁は夢のなかで」。
まさしくあつい空気のなかで、この作品がこれほど好意的に受け入れられるとは。
みるべき人たちにみてもらえた実感。


8/22(土)記 津和野!!

日本にて
早朝の小倉は、小雨。
事情により、島根県津和野に向かう。

山陰の小京都。
まことによろしい。
少なくとも、いちパッセンジャーにとっては。
寅さん映画の中に入り込んだ気分。
美術館だけでも、一泊ではまわりきれないほど。


8/23(日)記 乙女峠の虐殺

日本にて
明治天皇はクリスチャンだった、というなかなかトンデモな日本人の牧師の説教をカセットテープで聞いたことがある。

それはさておき、明治天皇を長とする明治新政府の時代になってからも、きりしたんの虐殺が続けられていたことは、史実として記憶されるべきだ。
特に悲惨なのが、ここ津和野・乙女峠での虐殺である。
胸を打つエピソードを伝える犠牲者のなかには14歳の少年、そして5歳の幼女もいる。

津和野カトリック教会付属の資料館、乙女峠の聖堂、山林に築かれた十字架の道行き。
これらだけでも津和野を訪れる価値は十分にある。


8/24(月)記 山口の山寺で。

日本にて
島根から山口に移動。
お寺の年間最大の行事という施餓鬼の法要を撮影。
どういうことをするのか、よく見当がつかなかった。
過疎地の山寺に総勢10名以上の僧侶が集まり、驚いた。
こんなに坊さんを見るのは、チベット取材以来ではないかな。

余興として檀家さん相手にブラジルの話と「60年目の東京物語」を上映。
かつて「ビデオレター」シリーズの取材の時、あるぜんちな丸の同船者にこの部落出身の人が2家族もいて、奇遇な思いに駆られたことがある。
その人たちを知る人も多く、ブラジル移民の存在が山村によみがえった感あり。
あなかしこ。


8/25(火)記 山村にまどろむ

日本にて
朝晩は、うすら寒いほど。
近場で粘菌でも、と朽木を返したり腐葉土をかき混ぜたりするが、そうナマやさしくはない。

車で炭酸温泉に連れて行ってもらう。
アメニティ度ゼロの本格的湯治温泉。
温泉道もナマやさしくないな。


8/26(水)記 長門富士から。

日本にて
長門富士とも呼ばれる十種ヶ峰(とくさがみね)に登る。
標高988メートル、はるか日本海も望める。
近くの集落の俯瞰が見事。
気分は、「八つ墓村」の落ち武者か、「七人の侍」の野ぶせりか。
どっちもあんましいい役どころじゃないな。

案内してくれた和尚が、やたらに植物に詳しい。
先生がいれば。

おりしも、今日は橋本梧郎先生の一周忌。
明日から三日連続で追悼上映に挑む。


8/27(木)記 罰ゲーム

日本にて
さあ、離日モードに突入。

横浜で知人がぜひ、という展示を見てから、渋谷で各種買い物。
夜は世田谷で非公開上映会。

今回、あれもこれもとブラジルから買い物を頼んでくる人がいる。
いったいどこで買うんだ、というようなものが少なくない。
まるで訪日・罰ゲームである。
この人だけでよかった。
これだけの買い物を複数の人に次々と頼まれていたら、こちとら家族の見舞いも上映会巡礼もできたものではない。

そういえばこの人、日本に行ったままのお子さんがいるんじゃなかったっけ?

かつて僕の訪日の度に、決して簡単かつ軽いものではない品々を頼む友人がいた。
その彼の連れ合いは、例年のように訪日している。
ついに奥さんには頼まないのか、と聞いてみると、
「買い物は、たいへんだから」
とホンネが出た。
こっちは賎業移民か。

頼まれものの買い物は、今日だけでは終わらず。
そろそろ体力の限界だが、体罰は続く。

世田谷上映でもいい感じで盛り上がるが、明日以降に備えてワインを早飲み、ソコソコで失礼させていただく。


8/28(金)記 永代橋に気づく。

日本にて
今日も罰ゲームは続く。
同じ人に頼まれた、何に使うかもわからない薬品を求めて、薬局5軒ハシゴ。
けっきょく、ひとつの薬は処方箋がないと買えないことを学んだ。
ただのお人よしで、買い物・運び屋を頼まれていると、麻薬等の担ぎ屋の冤罪を着せられる危険もあると再認識。

夕方より東京・茅場町のギャラリーマキさんで、Saudade Books主催の「ギアナ高地の伝言」上映会。
参加者全員の顔の見えるくらいの、ころあいのよろしい規模の上映。

昨年の上映に引き続き、サウダージ・ブックスの淺野さん、常連で今回の上映会案内のレイアウトも引き受けてくれた和田さん、女将のマキさんらから鋭いコメントと解釈をいただく。
何よりも作品にとって幸せな、ひと時。

今回も淺野さんと僕とで、事前に息を飲むような偶然が発生した。
淺野さんが編集を担当した快著「学問の春」(山口昌男著・平凡社新書)( http://sea.ap.teacup.com/saudadebooks/ に紹介あり)とこの作品が、しょっぱなからリンクしていたのだ。
マグネチック現象は、上映後のインド・タイ料理屋でもさらに発生…

ちなみに今年、さる大学の紀要に岡村へのインタビュー記事が掲載されることになった。
しかし校正段階では存在した訳注は「是の打ちどころがない」と岡村に酷評され、けっきょく訳注そのものがボツになった。
担当者にこの淺野さんの仕事の訳注を見ていただき、猛省してもらいたい。


8/29(土)記 ふじみ野のマグネ

日本にて
ナメクジ訪日者、今日は午前中から最後のコインランドリーに。
ひと仕事。
乾燥もあるのでけっこう時間もばかにならない。

明日の出発に備えてアジトをソコソコ片付けてから、埼玉県ふじみ野市へ。
いよいよ今回、最後の上映。
して、集客が最も読めない上映。

これまた不思議なことがいくつか起こった。
隣の市に住む僕の親戚が来てくれた。

質疑応答の際、アマゾンに20年、暮らしたというおばさんが、橋本先生と作品のことを意に介せず、ひたすら自分史を語り始めた。
これが、なかなか止まりそうにない。
僕には興味が持てるが、他のお客さんたちの無言のブーイングがうかがえる。
こういうのを巧みに仕切るのも私めの役どころ。

おばさんの過ごしたアマゾンの町は、僕もアマゾンの水銀汚染の取材などで何度も通っている。
お開きにした後、おばさんに僕のアマゾン水俣病シリーズの主人公・ブランシェス医師を知っているか聞いてみた。
なんと、おばさんのかかりつけの医者だというではないか。

懇親会は、会場近場の人気のない焼きとん屋に乗り込んだ。
カウンターに一人だけおじさんの客がいる。
こっちの盛り上がりに、おじさん迷惑しているのではないかと思いきや…
おじさんのオバがブラジルに渡り、音信が途絶えたのを気にしていたというではないか。

主催してくれた「ふじみ野テレビ」の百島さんのうれしそうな表情が、何よりの収穫。

帰りの電車でも、不思議な盛り上がりがあって…

これだから上映巡礼、やめられません。


8/30(日)記 明太子の代償

日本→アメリカ合衆国→
今回の東京の潜伏先は、寝返りをうつスペースもない。
早めに空港に向かうこととする。
ここのところ、諸事情でやたらにブラジルと日本を往復した副産物として、空港のラウンジが使えるようになった。

JALの成田のラウンジのダイニングでは明太子が食べ放題、といった話を上映会の後の飲み会で披露して、一部若者をうらやましがらせた。
しかし今回は…明太子がない。

その代わり、という訳でもなかろうが、「特製」ビビンバやトムヤムクンスープなどのニューフェースが。
エコノミーの機内食よりは、ずっとおいしいものにありつける。

ラウンジをネットカフェ代わりに。
少し席をはずすと、開いていたページが全部消えちゃうけど。

旅の疲れがどっと出てくるのを感じ、電動マッサージチェアへ。


8/31(月)記 季節のない街

→ブラジル
満席のエコノミーでサンパウロ到着。
税関クリアー、ラッシュ時をタクシーで1時間半かけて帰宅。
いやはや、しばらくゆっくりさせてちょうだい。

寒いんだか、暑いんだか。
残暑の東京よりははるかに過ごしやすい。

ひと息ふた息ついてから、おそるおそるPCをつなぐと…
さっそく日本から原稿の催促が。


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