移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
岡村淳のオフレコ日記
     西暦2010年の日記  (最終更新日 : 2011/01/02)
3月の日記・総集編 美のシャワー

3月の日記・総集編 美のシャワー (2010/04/01) 3/1(月)記 4月になれば

ブラジルにて
さあ今日は断食だ。
最新作の仕上げを進めるかたわら、4-5月の訪日詳細などをつめていく。
いくつか新しいことができそうだ。

わくわくしながら精進。


3/2(火)記 手紙だすなら日の本で

ブラジルにて
近くの郵便局に、日本宛EMS(国際エクスプレスメール)を2通、投函に。
いずれも数10グラムの軽量だが、ひとつあたり約2600円。
いたいが、しかたないか。

図らずも、日本から今日だけで2通のEMSが届く。
日本からは、500グラムまで2100円の料金ではないか。

日本からブラジルにはがきを送ると、航空便でほんの70円。
ブラジルからだと約130円だ。

どうしてこういう違いがあるのだろう?
この国は、消費者として不審・不快・不安なことが多い。

はがきとEMSは日本から出すことにしよう。


3/3(水)記 寝技

ブラジルにて
最新作「下手に描きたい」は主人公の画家・森一浩さんの作中の言葉をパクらせていただくと、短期間の「発酵」・醸造の期間に入った。

寝かしている間に、別の仕事の未チェック素材の試写に。
まずはシステムを変えて。
作品、溜まってます。


3/4(木)記 ビッグイシューのナゾ

ブラジルにて
日本で買ってきて、読まないままだった雑誌を発見。
「ビッグイシュー日本版」新春号だ。
この雑誌、日本の都市部の街頭で販売されている。
販売者はいわゆるホームレスの人で、お値段300円のうち、160円は販売者の収入となり、この人たちの自立を応援しようというシステム。

ロンドンで始まったそうで、日本語メディアではなかなか目に入らない興味深い記事も多い。
販売するおじさんたちとのコミュニケーションも味があり、訪日中、見かければ買っている。

この号も巻頭の「成熟カルタ」から力作だ。

こんな記事が。

ウガンダで、インドで、ソーラー携帯ユーザー急増中
途上国、携帯電話ユーザーが10%増えると、GDPが1~2%増加する?

電気がなかったり、たとえあっても電気代が高い上に供給が不安定な地域に暮らすアフリカやアジアの何百万もの人々の暮らしに、ソーラー充電の携帯電話が革命をもたらしている。


以上が見出しと前書き。

この記事を読んでみて、素朴な疑問が生じて読み返してみるが、わからない。
ソーラー携帯電話そのものの料金は書かれているが、通話料にはまったく触れられていない。
ウガンダやインドで、どれぐらいの地域が携帯電話通話可能かも明らかにされていない。

ブラジルの最近の報道によると、世界で最も携帯電話通話料が高いのが同じアフリカの南アフリカ共和国だという(ちなみにブラジルは、ワースト2)。

こうした疑問を持つ方がおかしいのか、記事の方の欠点あるいは特殊な意図が背後にあるのだろうか?

別の記事では、解説なしにいきなり「GEN」という言葉が登場する。
知人がインタビューされたということでいただいたバックナンバーでは「粘菌」という語がルビが振られているだけで、解説なしに使われていた。
「岡村系」の人ならある程度、粘菌とは何かがイメージできるかもしれないが、一般的にはいかがだろうか?

書き手だけが知ってるつもりになり、読み手が考慮されずに置いていかれるというのは困ったものである。
まさか、ホームレスに売らせる雑誌はこの程度のレベルでいいや、という意識があるとか?
いまどきフリーマガジンでもクオリティの高い記事は少なくない。
プロとして金をちょうだいするからには、もう少し気合いを入れて編集していただきたいもの。

追記:この雑誌の編集部あてにこの疑問について問い合わせのメールを送りましたが、返信はいただけないでおります。



3/5(金)記 LANGSDORFF

ブラジルにて
この人の名を初めて意識したのは、ブラジルの記念切手だったかもしれない。
セントロ方面で開催中のラングズドルフ展を鑑賞。
ラングズドルフは19世紀の、あえて範疇分けすると博物学者。
感銘。
高い目録も奮発して購入。
目録を読んでから、また見に行こう。

中隅さんや橋本先生でもご存命なら、話が弾むんだが。


3/6(土)記 はくよ

ブラジルにて
未明に覚醒。
昨年、台湾で買ってきたDVDを観ることに。
黒澤明「白痴」。
なぜか台湾版は「はくよ」という、ひらがな表記になっている。
「ち」と「よ」をまちがえたのかな。

確か高校生の頃、オールナイト上映に潜入して見た覚えがあるが、けっこう眠ってしまったことぐらいしか記憶していない。

ついに、ふたたび対峙。
原節子と久我美子の対決シーン、未明と長尺の眠気が吹っ飛んだ。
これだけでも大変な収穫。

ブラジルがらみのネタも拾う。
黒澤とブラジルでは、これが二つ目かな。


3/7(日)記 おろしゃ酔ひ

ブラジルにて
フェイラ(路上市)の魚屋で魚をさばいてもらうのを待つ。
下の方から、誰かがつつく。
少年だ。
物乞いかと思ったら、リモン(ライム)を一袋持ち、1レアル(約50円)だという。
このフェイラにはインディオ系などの物乞いが多いが、ものを売るという少年に心を動かす。
「2レアル札しかないけど」
「おつりを持ってくるよ」
かつて、こうしてドロンされた体験あり。
この少年は、時間がだいぶかかったが、しっかり持ってきた。
「ありがとう」
こっちがお礼を言う。

さあブラディーメリーでもつくるか。
近くのスーパーの長蛇の列につき、国産ヴォチカ(ウオッカ)を買う。

おとといのラングズドルフは帰化ロシア人。
昨朝は「白痴」。
ここのところロシアづいたな。


3/8(月)記 月曜新たに

ブラジルにて
今日から、家族の新しいシフトが。
暴飲暴食を反省して、今日も断食することに。
主夫業の合い間に、ちびちびとかつての撮影素材のチェックも進める。

夜はぐったりと画集などを繰る。


3/9(火)記 乳酸発酵

ブラジルにて
中央アジア起源だという。
ブラジルまでのはるかなる道程を想う。

学名Brassica junceaの変種。
アブラナ科で、カラシナの変種とのこと。
有機農場産の野菜に、見慣れぬ青菜が。
油炒めにしていただいていたが、のちにタカナと知る。

ナマのタカナの調理は、初めてだ。
ググってみると、いわゆる高菜漬けはタカナを乳酸発酵させたものとある。
先日、大根をいわゆる大阪漬けにしてみた。
漬物器に入れておいた日数が長く、夏季だったせいだろう、古漬けになってしまい、味もイマイチに。
これが乳酸発酵ではないかな?

先週、さっそくタカナ漬けを開始。
一日ぐらいであのピリ味とともに、いい感じである。
さあ色も味も、こんなものかと。

食卓に出し、子供に味見させる。
ブラジルで食べたことがある、という。
義母も僕も高菜漬けを作ったことはないはず。
おそらく僕が日本から担いできた売り物の高菜漬けを思い出したのだろう。
つまり、これでオッケーだ。

さあ高菜チャーハンを作ろう。


3/10(水)記 JALからの回答1

ブラジルにて
ここのところ日本航空(JAL)での旅が続き、マイレージもたまりラウンジも使えるようになった。
サンパウロとニューヨークのラウンジの不都合についてメールでいくつかの点についてクレームしたところ、それぞれ回答をいただいた。

クレームをするというのもけっこう疲れるもので、こちらも相手に期待もできないところにはそんな労力は使わない。

日本航空の問題は他にも同様の問題で嘆いていた方々がいるので、ここで回答を共有させてもらおう。

まずはサンパウロ・グアルーリョス国際空港のエグゼクティブクラスのラウンジのネット環境。
LAN使用可能なはずなのに接続が難しく、3台設置されているデスクトップPCは日本語入力どころか日本語サイトも文字化けして閲覧できない、という問題。

そもそもこのラウンジはアルゼンチン航空のラウンジ。
いままでLANの件でクレームすると係員によって対応がまちまちで、こっちのPCの設定が悪い、とされることもしばしば。
他社のラウンジではつながったぞ、メールが遅れなければ仕事を失うぞ、などと騒いでようやく他社のラウンジやファーストのラウンジを使わせて「すんなりと」接続できた体験あり。

今回の回答によると「内部が狭く壁が厚いという建築上の問題」が考えられるとのこと。
少なくともこっちのPCへの冤罪は晴れた。
デスクトップのPCについては「セキュリティ上の問題」(よくわからないが)から日本語入力を可能にはできないが、日本語サイトは閲覧できるようにした、とのこと。
これだけでも大きな前進。
サンパウロでJALラウンジ使用予定の方、どうぞお試しいただきたい。

鎖国生活を営む在日日本人たちには、日本語環境のありがたみが意識されることもないだろうが。

小さなことでも善処の努力を怠って、したり顔で物事を断罪するのはやめよう
、と自分に諭す。


3/11(木)記 「蛮勇タルザン」

ブラジルにて
タルザンという響きが、そそる。

朝のうちは素材の試写チェック作業。
午前中にビデオカメラを持ってお出かけ。
近郊で、訳アリの撮影。
撮影のほどは、可もあり不可もあり。

夕方、ぶり返した猛暑のなか、けっこう消耗して帰宅。

昨日、街で買ったターザンもののDVDを観ようと発意。
現在進めているプロジェクトに、意外なヒントがあるかもと思い、購入。
ターザンものはいくつかあったが、カバーに古代文明系っぽい部族の写真があるのを選んだ。

自分の今日までの歩みを振り返る。
幼少年時代に少なからぬ影響を与えた物語に「ウルトラQ」「ゲゲゲの鬼太郎」があるかと意識していた。
ターザンシリーズもあったかも、と思い返す。
当時、テレビで日中、けっこうターザン映画を放送していたものだ。
小学校の体育館にも「ターザンロープ」が設置されていたっけ。

ポルトガル語題「TarZan(ママ) O DESTEMIDO」、原題「TARZAN THE FEARLESS」というのを買っていた。
これは有名なワイズミューラーのではなかった。
こんなカットバックでお話が作られていたのが、感無量。

この作品は1932年制作とパッケージにある。
ネット検索してみると、邦題は「蛮勇タルザン」。
数あるターザンもののなかで、この作品だけが「タルザン」表記のようだ。

1932年。
大日本帝国では軍人どもが「話せばわかる」と説く首相を「問答無用」と射殺。
かたや鬼畜米英は「蛮勇タルザン」。

もう少しターザンもの、みてみないと。


3/12(金)記 チャイナ→コリア→アラブ

ブラジルにて
午前中、日本からの知人とリベルダーデのチャイニーズ系のカフェで喫茶。
午後、日本に戻る若者とコリアン料理。
そのあと、思わぬアミーガにばったり。
アラブ系ファーストフード店で痛飲。

世もふけてブラジルの我が家に帰る。


3/13(土)記 Be Tarzan in bed

ブラジルにて
表題のような件名のメールがいくつか入っている。
ターザン?
一昨日、「タルザン」について書いたことに英語圏から反応が?
すけべスパムメールに違いない。

「蛮勇タルザン」はフラストレーション多く、昨日、新たにターザンものDVDを購入していた。
数日前にはもっと種類があったのだが、ほとんどなくなっていた。
Be Tarzan志向がブラジルには多いのだろうか。

今回のはなぜかスペイン語カバー、英題は「TARZAN'S SECRET TREASURE」。
ワイズミューラー主演だ。
これは、なかなかである。
動物の演技だけでも十分にすごい。
僕の本来の狙いも、ひょっとするとけっこうビンゴかもしれない。

これの邦題は「ターザンの黄金」、1941年制作のようだ。
鬼畜米英がこれだけの娯楽映画を製作した年、大日本帝国は米英に対して宣戦布告。
未曾有の国難を迎えることになる。

それにしてもベッドでターザンしろ、っていわれても…
あんな声を発したら近所迷惑というもの。


3/14(日)記 アマゾン→オランダ

ブラジルにて
アマゾンから来た友人に、現地名産の黄色い唐辛子をもらった。
冷蔵庫に入れておいたが、ヘタの部分にカビが生えてきた。
半分ぐらいを、まずは酢漬けにしてみる。

調べてみると、同じ品種が日本にもペッパーソースとして入っているようだ。
学名に、チャイナがある。
はて、トウガラシは新大陸原産のはず、とさらにリサーチ。
命名者の18世紀のオランダ人植物学者が、チャイナ起源のものと間違えたのが、学名に残ってしまったようだ。

ここのところ、オランダづいている。
宮沢和史さんの次は、宮沢りえさんのルーツを、という訳ではない。

来月の今頃は…


3/15(月)記 告発は終わらない

ブラジルにて
先週末は各地からうれしい知らせが届いた。
ただひとつ、読み捨てならぬ手紙が。
さる日系団体の長からだ。

先方からは普通郵便。
届いた届いていないでもめないためにも、返信するとしたら書留だ。
週明けまで、じっとこらえる。

今朝、反芻すると怒りがぶり返し、子供の送迎の運転に差し障るほど。
こちらの善意をもてあそんで悪用し、怠慢と傲慢でごまかされたらたまったものではない。
同じメンバーによる被害者も少なくないと聞く。
毅然と抗議することに。

こういうのは消耗する。
そんな時、オンライン上で見た記事に慰められる。
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1142275&media_id=53
(「ミートホープ」事件の元常務がペンで叫ぶ「最後の告発」 日刊サイゾー3月15日付)
これにアクセスできるのは、ミクシィ加盟者限定。

聖書でいう「なぐさめる」とは「いたみを、ともにする」の意とのこと。
あらためて実感。


3/16(火)記 イタリア語を話しますか?

ブラジルにて
サンパウロの街角にて、歩行中。
軽自動車を停車した男が話しかけてきた。
「イタリア語を話しますか?」
とポルトガル語。

てっきり道を聞かれるかと思い、車に歩み寄る。
「ポルトガル語か英語なら」
男はまず名刺を見せた。
「僕はミラノから来ました。あなたは?」
「日本ですよ」
けっこう普通にポルトガル語を話す。
名刺は見せるだけで、よこさない。

「僕はジョルジオ・アルマーニの代理人です。サンパウロで〇〇〇(聞き取れず)が開かれたのですが、少しだけ在庫が残りました。いかがですか?」
なんだ、物売りか。
「ワタシ、オカネ、アリマセーン」
この一言で先方も引き下がる。

けっきょく、すべてポルトガル語。
アルマーニ代理人もイタリア系かもしれないが、たぶんに怪しい。
カモに見えたのは、光栄なのか…


3/17(水)記 麦茶喫茶

ブラジルにて
昨日の午前中、お願いしたかったが先方に先約が入っていた。
一度、散髪したいと思うと、髪がうっとうしくなって仕方がない。
今日の午後をマルカする(註:いわゆるコロニア語で「予約する」の意)。

今日はなかなかいい話が聞けた。
誰にでもしない話だろう。
終わった後で、隣でカフェをおごってくれるという。
隣の日系バール(喫茶店兼一杯飲み屋)には、冷たい麦茶があった。
きゅっといただく。

大塚さんにいつまで散髪してもらえるだろうか。


3/18(木)記 ある考古学者の訃報

ブラジルにて
昼前に、近くの郵便局へ。
例によって他紙より遅く届いていたサンパウロ新聞を持っていく。
順番待ちの間に、開く。
「解説」のページで目をむく。

林謙作先生の訃報記事。
元北海道大学教授、享年72。
今どき、若い。

数年前、仙台上映が続いていた時、地元のライターと林先生の話で盛り上がった。
その時、健康がよろしくないとは聞いていたが。

林先生の専門は縄文文化。
実に刺激的かつ、攻撃的な論文を発表されていた。
岡村は学生の時、林先生が仕切る岩手の発掘現場に、単身、修行にいった。
林先生は岡村の知る最強、かつ最狂の考古学者だった。
具体的には、ここには書けない。

それにしても。
ブラジルの日本人一世の人口は6万ぐらいか。
そのなかで、林先生の名を知る人がいるだろうか。
しかも直接の接触があった人が他にありえるだろうか。

このページは日本の新聞記事のコラージュ。
割付上の事情のチョイスだろうが、ただひとりのために向けられたような。

少し前に、在秋田の縄文志向の人に、林先生の存在をお伝えしていたのだが。


3/19(金)記 ひとすじなわでは。

ブラジルにて
昨日から、いよいよ橋本梧郎先生に関する未編集映像のチェックを開始した。
これは、なかなか一筋縄ではいかないぞ。
当時の記憶がよみがえってくる。
よくぞ…

今日は午前中に突然の来客、午後は家庭の事情でほとんど作業は進まず。

橋本梧郎シリーズ、あと2作品は作るつもり、と申してきたが。
可もあり不可もあり、さあどうなることか。


3/20(土)記 高菜チャーハン

ブラジルにて
土曜は昼食も家族に合わせて作らねば。

自家製高菜漬けがどんどん溜まってくる。
高菜チャーハンに挑戦してみるか。
ネットでレシピを検索。
高菜チャーハンに卵を使ってもいいと知る。
もらいものの卵も使い切れないほどあるのだ。

なかなかのお味に仕上がる。
ブラジルくんだりに移住して、自ら高菜漬けを漬けて高菜チャーハンまでこさえるとは。

それにしてもネット情報は割り引かないと。
チャーハンをベタベタにしないためには、ゴハンに卵をまぶしてから炒めるといい、と複数の書き込みがある。
数日前に実践したが、かえっていつもよりベチョベチョになってしまった。


3/21(日)記 預言者と故郷

ブラジルにて
さてさて地元サンパウロでの上映。
以前にも同じ主催の上映の際、「コロニア系」の「オレオレ」おじさんが、きちんと作品も見ないで、質疑応答の際にご自分以外にはまるで興味の持てないお話を延々とされてイヤハヤだったことがある。

その手が来場されていたら、最初に釘を刺そうと思っていたが、おかげさまでヘンなのは来たらず。
テレビモニターでの上映だったが、事故もなく、つつがなく。

昨年、日本での上映でも上記のような「オレオレ」おばさん登場。
場内の圧倒的なひんしゅくムードを受け、現場カントク自ら仕切り倒した。
してこのおばさん、ブラジル日系人だった。

さあとりあえずこれで訪欧・訪日前の公式上映はおしまい。


3/22(月)記 ルワンダの茶

ブラジルにて
セバスチャン・サルガドの「アフリカ」を再び繰る。
言葉も出ない。

何枚も割かれているルワンダの茶葉栽培が気になる。
おそらく紅茶だろう。

手元の「AFRICA」はポルトガル語・スペイン語・イタリア語の三ヶ国語版。
いずれも表記はRuanda。
RuandaとTeaで英語検索してみるが、ぱっとしない。

日本製の地図帳を見てみる。
するとルワンダの英語表記はRwandaであるとわかる。
さらに日本語表記ではルアンダ(Luanda)というアフリカのアンゴラの首都があるので、まことにややこしい。

して、日本でもルワンダ製紅茶がネットで購入できることがわかった。
ルワンダでの紅茶栽培の開始は新しく、1960年とのこと。

茶請けは、サルガジンニョといくか。
(ごく一部ウケを狙う)


3/23(火)記 美のシャワー

ブラジルにて
ブラジルでは貧乏人「でも」と、書こうとして立ち止まる。
入浴の頻度と収入の高低は相関関係にあるのだろうか?

ま、とにかくブラジルでは概して経済的に裕福ではない人「も」よくシャワーを浴びるようだ。
一日に複数回、というのもふつうのようで。
気候のせいもあるだろう。
ブラジルで毎日シャワーの習慣が身につくと、日本でもそうしたくなってしまう。

さて主夫業、編集作業等でけっこう時間も体力もいっぱいな感じ。
それでも、本物のアートを求めたい志向が出てきてしまった。
仮にもクリエイトな作業を続ける以上、時折きちんとした美のエネルギーに触れておくのは義務というもの。

サンパウロでは大自然のエネルギーに触れるのは難しいが、アートの方は相当なもの。
主夫業の合い間の午後のひととき、あと数日を残すシャガールの版画展へ。
MASP(サンパウロ美術館)は火曜は無料なのである。
その分、幼稚園の軍勢が押し寄せたりするのだが。

シャガールでほんわかした気分になり、さらに同館の収蔵品展で半ば恍惚状態。
入場料無料の返礼に、決して安くないカタログを購入。
ラッシュの始まるメトロで帰宅、夕食の支度。

美のシャワー、爽快。


3/24(水)記 柔道の危険性

ブラジルにて
日本の新聞社のHPを見ていて、いたく共感する記事が。
「柔道の危険性 指導者は認識を 遺族ら被害者の会結成へ」。
http://www.asahi.com/national/update/0322/OSK201003210179.html

わかっているケースだけで、1983年から2009年までに中学・高校の柔道の授業やクラブ活動での死亡者は、108人にのぼるという。
ちなみに野球の約5倍の死者数とのこと。
関係者が隠蔽している事件も含めると、どれほどになることか。

この記事に紹介されている死亡事故に関して学校側は「練習は適切」だったと発表しているという。
「適切」な学校活動で生徒が殺されている事態が恐ろしい。

僕も、柔道で殺されかけた。
僕の通っていた都立高校では体育の授業で柔道か剣道が必修だった。
後述するが剣道にはトラウマがあるので、柔道を選んだ。
まだ受身の練習をしている段階で、柔道部の猛者に投げられ、脳震盪を起こした。
社会人になってから皆さんに危険がられる秘境取材を続けてきたが、脳震盪の体験はこの時だけである。
僕の事故は日常茶飯のこと、受身をきちんとできないこっちが悪い、ぐらいのあつかいで、保健室にも運ばれなかった。
公立高校の必修授業は命がけだ。

僕はそもそも運動神経音痴である。
小学校以来、体育の授業が苦痛で仕方がなかった。
中学に入り、あえて苦手なスポーツに挑もうと剣道部に入ってみた。
しかし、ここが大日本帝国軍隊以来の悪癖の巣窟だった。
いまならセクハラ行為は日常的、そして意味不明の連帯責任。
先輩たちのチームが試合に負けたということで1年生も丸坊主にすることを強要された。
部をやめた場合のイジメも相当なもので、それが怖くてやめられずにやめた仲間をいじめる側にまわらなければならないといういやらしさ。
学年替わりで思い切って退部した時の開放感。
少なくともこれまでの3年生はもういないから、あとは耐えるだけ。

中学、高校のこうした体験があるので、いまだにスポーツはご免こうむる。
スポーツ嫌いということで疎んじられ、不健康・不健全扱いされたこともしばしばだ。
しかし歩くことが好きなぐらいで、スポーツは拒否してもこれといった病もなく、マイケル・ジャクソンより長生きしている。

学校でお子さんの命を奪われた親御さんの心中は、察するに余りある。
遺族、犠牲者たちのつながり、そして事故を負わせた側の勇気あるカミングアウトに期待したい。
いくら授業料がタダになっても命を奪われるような学校に通うより、引きこもるなり、南米に軽い気持ちでわたるなどして生きながらえよう!


3/25(木)記 This Is The South America

ブラジルにて
ちょうど先週の木曜。
アルゼンチンに郵便を送った。
ブエノスアイレスに滞在する日本の若い人が、昨年の現地での上映会に参加してくれた。
気に入ってくれたようで、岡村作品にスペイン語字幕を付けて上映したいという。
メールでのやり取りの末、とりあえず候補作を3本選び、DVDに焼いて送ることになった次第。
Sur postal expressというメルコスル加盟国内での書留速達便がある。
日本のエクスパックのような専用の厚紙の封筒を買って送るというシステム。
局員に聞くと、48時間で到着とのこと。
安くはないが、ここはフンパツ。

先方にインボイス番号を連絡、この週末には見れますね、みたいな返しをいただいた。
パソコン検索で物件の配達状況を知ることができる。
これが「ブラジルからアルゼンチンに移送中」で止まったまま。
バイク便で運ばれたのか?

しかしバイクでも十分、到着している日数が経っても届かない。
飛脚便だったか?

今夜、ようやく到着の報が。
いずれにせよ、まだ完成台本をPC入力していない時代の作品なので、しばらくは楽しみが尽きない感じ。
自作の写経だ。


3/26(金)記 橋本ゴロザウルス

ブラジルにて
家事の合い間に、橋本梧郎先生関係の未編集映像のチェックをぼちぼち行なっている。
連れ合いの、ゆきさんが絶妙な味を出している。
久しぶりにインパクトの強い移民女性をご紹介できそう。

当時の橋本先生は耳が不自由なこともあり、自分が聞き取れない話をされると、このうえないイヤな表情を見せてくれた。
これだけ気を使ってその顔はないものだろう、といたたまれない思いになることしばしば。
あの表情もよみがえる。

あと橋本先生シリーズを2本にまとめるつもりだった。
素材をチェックしながら、ヤマ場の振り分け等も考慮すると、3本という手もあるのかも、という気もしてきた。

そうこうしていると「あもれいら」第3部についての打診が日本から。
例のスペイン語版字幕制作の話がGOとなれば、新たに作品の完成台本の電子写経もすることになる。
飛び入りの最新作のお披露目上映のセッティングもあり。
おかげさまで、退屈はしない。


3/27(土)記 橋本先生と森画伯

ブラジルにて
急きょサンパウロで関係者とお仲間にお集まりいただき、「下手に描きたい」のお披露目上映を行なうことになった。
そわそわ。

けっこう辛口のメンバー中心だが、いずれもそれぞれの感動と思いを語ってくれた。
これだけ制作者の思いをはるかに超えて熱く語ってもらえる作品というのは、初めてかもしれない。

「下手に描きたい」をとりあえず仕上げてから、いくつかの残務を手がけている。
ここのところは橋本梧郎先生の、いわば「静」の映像に浸っていたので、森画伯の「動」が作り手にもキョーレツ。
それでいて、橋本先生と森画伯の共通点も発見。
岡村ドキュメンタリーは、人に尽きるのかもしれない。

人からはずしたドキュメンタリー作りもひとつ腹案にあるのだが、よく考えよう。


3/28(日)記 大事なこと

ブラジルにて
ブラジルの日刊紙「FOLHA DE S.PAULO」の月に一度の付録誌「serafina」。
バックナンバー昨年10月号をひもとく。
いまや世界的に有名になったサンパウロ出身の兄弟の路上アーチスト・グラフィティ作家のOS GEMIOS(ふたご)のインタビュー記事が。

サンパウロ市のカンブシ区に生まれ育つ。
今日ではニューヨークはマンハッタンをはじめ欧米を制覇、日本でも展示されている。
路上のアートからキュレーター付きのミュージアムへ。

いわく「大事なのはただ、描くことができること。ペンキの匂いをかいで、つくり続けること」。

今日も街中で彼らの作品を見つけられるかもしれない幸せ。


3/29(月)記 ガリ

ブラジルにて
日本からの年賀ハガキが、今月後半になっても届くような郵便事情。
しばらくは来ないだろうとあきらめていた「あめつうしん」を夕方、落手。
何度かご紹介させていただいたガリ版刷り!のミニコミである。

最新号には、田上正子編集長にご依頼いただき、駄文を書かせていただいた。
といって岡村本人がガリを切ったわけではないので、文章はさておいて、文字は読みやすい。
苦心惨憺、ガリ版刷りのミニコミなればこその味付けのものを書いてみた。

そこそこの長編になり、前後編ということに。
今号は、「ブラジル移民・百年のこぼれ話(前編) はるかなる記念式典」。

原版がガリ版のため、印刷部数に限りがあるが、若干の在庫はいまなら入手可能とのこと。
お問い合わせは、田上正子編集長  cb5m-tnue@asahi-net.or.jp  まで。

さあ後編、仕上げなくちゃ。


3/30(火)記 歪められた画面

ブラジルにて
画家や写真家が、自分の作品のフレームを面積にして3分の1近くゆがめられて、平気でいられるだろうか。
好きな絵画や写真の作品のある人は、それを湾曲させた鏡に映したようなイメージを想像されたい。

午前中、サンパウロ市内の未踏の美術館へ。
さっそく入り口にワイド画面のモニターがあり、動画を流しているのだが…
どう見ても、スタンダードサイズ(画面の横と縦の比率が4:3)で撮影したものをハイビジョンのサイズ(ビスタ・サイズ、比率は16:9)に映し出している。
こういうのを見せられると、吐き気がする。
ただの見世物、刹那的な客寄せキャッチならともかく、絵画も展示する美術館がこれだ。

日本では90年代半ばぐらいから、ワイド画面のテレビが小金持ち相手に出回り始めた。
当時はワイド画面サイズ用の映像など、映画ぐらいしかなかったから、ワイド画面そのものを誇示して楽しみたいムキは、標準サイズの映像を横伸ばしにゆがませて視聴するようになった。
美的感性から乖離したこのナリキン趣味感覚は、家電メーカーのワイドテレビのグローバルな売込みによって、ついに美術館までゆがませてしまった。

夜、サンパウロの国際交流基金(英語やポルトガル語では日本基金)のDVD上映と講演に。
DVDはロール分けのつくりになっているので、テレビ放送用のものらしい。
なんと上映される画面比(画面アスペクト比)はハイビジョンよりさらに横長で、2:1を超えているとみた。
作品そのものはハイビジョン画面対応のようだが、それがさらに横長にゆがめられているのだ。

スタンダード画面をハイビジョン画面でゆがめて視聴する悪癖がついてしまうと、ワイドモニター用の映像が普及したらそれをさらにスコープサイズまでゆがめないと、見た気がしないような人間が登場する、という近未来ブラックジョークを想定していたが、それが現実になるとは。
しかもそれが日本国民の血税で、日本文化を国外に紹介する機関でである。
さすが国策としてブラジルに日本方式の高品位テレビの売込みをかける祖国日本だ。
画面比に頓着しない、できないのは、「下品位」以外の何者でもないと思う。


3/31(水)記 昆虫観察

ブラジルにて
日系人の人口の多い我が家の近くには、数軒の日本食材店がある。
そのうちの1軒は、いわば閑古鳥の巣。
当方もお目当ての店が閉まっていた時に、しかたなく入ったことがあるぐらい。

さる友人に、この店、意外と自然食系が充実していると聞いた。
玄米のもち米があり、買ってみた由。
玄米のもち米、これは日本でも見たことがない。

昨日、思い切って鳥が啼く店へ。
玄米のもち米、どっさりある。
店の照明は暗いが、手にとってみるとあまりきれいくない(コロニア語のひとつ)。
穀類を好む甲虫まで袋の上を闊歩しているではないか。
手ぶらで出るのも気が引けて、ハナシのタネにと虫から離れたところの袋のを買うことに。

レジでは非日系人の若い女の客が正式な領収証を求めたようで、日本人のおばさんが不愉快そうに書き間違えながら取り組んでいた。
数分間、待たされてからおばさん、まだ手間取る領収証書きを中断して僕の勘定を先に済ませた。

さて今晩、まずはこのもち米を洗って水に漬けておくことにした。
うるち米の玄米に少量、混ぜてみることに。
軽量カップに数分の一程度。
その量にして、水洗いすると店でも見た甲虫の死骸が何匹も浮かんでくる。
さらに凝視すると、幼虫類が数種類登場。
いたんだ米も少なくない。
店では暗くて確認できなかった賞味期限は、今年の5月。
穀類で2ヶ月足らずの賞味期限とは。

弥生時代の米も、かくや。


前のページへ / 上へ / 次のページへ

岡村淳 :  
E-mail: Click here
© Copyright 2024 岡村淳. All rights reserved.