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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2024年の日記  (最終更新日 : 2025/01/03)
9月の日記 総集編 パーソナルスペース

9月の日記 総集編 パーソナルスペース (2024/09/04) 9月1日(日)の記 サンパウロ 水俣 満州
ブラジルにて


朝、4週間ぶりにクルマを動かす。
フロントガラスにはホコリ、というよりスス状の汚れが覆っている。
屋根のある駐車場だが、これだけの汚れが。

昼に向けて、海老カレーを作ってみる。
日本の地元のミタケ・オアシン食堂で台風海老カレーを食べた影響。
・・・エビはもう少し大きいのか、増量した方がよかったかも。

あいかわらず、うとうとと読書。
水俣の本屋で買った鈴木荘一著『満州建国の大義 石原莞爾とその告白』を開く。

水俣には近くの「つなぎ美術館」で開かれた森田具海さんの写真展を見るために再訪した。
この8月に発刊されたばかりの森田さん著の『ここで眺める水俣 あとから来る者たちの場所』に収められた写真には、水俣病の患者さんも、チッソ水俣工場も写り込んでいない。
この本で、水俣の市街にある「ブックシティ一心堂」という本屋が紹介されている。

美術館のあと、水俣のビジネスホテルにチェックインしてからこの本屋に行ってみた。
本の他にゲームやCD、DVDの置いてある、失礼ながら特に趣も味わいのない店だった。
地元本のコーナーも見当たらず。
女性のスタッフに持参した森田さんの本を見せてみるが、これといったリアクションもない。
この本が置かれている気配もなく。

そんな書店で「石原莞爾」を掲げた単行本が表紙を表にして並べてあった!
石原莞爾は僕が先日まで滞在した山形鶴岡の出身、満州事変の仕掛人である。
東条英機に疎まれて第二次大戦中は閑職に追いやられ、東京裁判では無罪となる。
石原の『世界最終戦論』を読んで、僕は戦争というもののとらえ方が大きく変わった。

鶴岡の「アマゾン先生」山口吉彦さんと石原を、枠にとらわれないスケール観等で比較考察してみようと思っていたが、現地で両者を並べて語れる人もなく…
鶴岡の愛しの書店・阿部久書店では石原関係の書籍があり過ぎて、どれにも手が出せなかった。

それがナント水俣のヘンテツも石牟礼道子の本もないような書店で、こんな本が。
迷うが、シンクロニシティを重んじて買っちゃう。

さらりとした石原と満州帝国の概史といったところだが、『世界最終戦論』も付録でついている。

・・・偶然に身を任せてみよう。


9月2日(月)の記 いとひかづもいとをかし
ブラジルにて


今日の午後から、さっそく泊りの食事当番。
日本で購入した食材、預かりものの他に…
こちらに戻ってつくったばかりの自家製納豆を持参しよう。

圧力鍋を用いないため、大豆を長時間、煮るのが面倒だった。
検索すると、蒸し大豆なら時間短縮になりそうでもあり、今回は蒸してみた。
これもけっこう時間がかかった。

今回も納豆菌のタネに、水戸の乾燥納豆を用いてみた。
すると先回同様、糸をひかないのだ。
匂いと味は納豆なのだが…

先回も検索してみた。
昨今は納豆の糸・粘りをきらう向きもあり、糸と粘りが少ない納豆も開発されているというが。
以前、JALの機内のオツマミの乾燥納豆をタネに用いたことがあるが、その時は問題なく糸を引きネバネバになったと記憶する。

未開封の納豆菌の粉末、ないしこちらで市販されているブラジル製納豆をタネにして、糸が復活されるかどうか意図してみよう。

泊り先に持参した糸なし納豆は、ヒジキの煮物に入れてみる。
ヒジキそのものがほのかに納豆風味となった。


9月3日(火)の記 彷徨ランチ
ブラジルにて


出先から、サンパウロ市内のミネラルウオーター源泉に給水に。
今日は5リットル瓶14本、計70リットル。
市販の半額以下の料金でpH9.1の鉱水をゲット。

源泉の駐車場に車を止めたまま、歩く。
ストリートアート探しのウオーキング。

料理疲れもあり、今日の昼はどこかこの辺で食べようか。
今日の散策地域は食い物やがありそうで乏しい。

少し足を延ばしたところに、バール、まさしく大衆食堂が2軒ある。
ちょうど昼どきで、どちらも付近の建築現場などの労働者でごった返している。
なかなか空きそうもない、無念。

その先の地下鉄新線の駅前の店で妥協するか。
ちと値段は張るが…
ここはオフィス街の勤め人たちが顧客。
4人掛けのテーブルをひとりでオッケー。
風通しもよく、広いスペースがうれしい。

ロールビーフかビーフロールか、それの定食とオレンジジュース。
オレンジジュースの量は控えめだが、食後のコーヒーもサービスで持ってきてくれた。

ゆったりまったり。
クルマまで歩いて、運転するのがメンドくさいけど。


9月4日(水)の記 続・Youは何しに病院に
ブラジルにて


「今日の件名」を考えて。
・・・ようやくひとつ浮かんだが、使ったことがあるような気がする。
検索してみると…
今年の7月18日に使ったばかりではないか。

今日は「続」をつけるか。

市内の病院で診察。
来たことのある病院だが、今日の医者ははじめて。

この病院はいくつもの棟があるのだが、随所に掲げられている絵画が目を引く。
総合受付の絵は見覚えあり。

診察室のある階のものは、初見のものばかり。

待合室にあるのは、キノコを標本ふうに描いた水彩画。
おもしろい。

診察室の廊下には、熱帯っぽい海の湾と、沖合のスコールを描いたエッチング。
これもおもしろい。
日本の台風や、アマゾンのスコールを想い出す。

指示された検査はめんどくさいけれども、またアートを見に来るのは楽しみだ。


9月5日(木)の記 中隅哲郎さんの肖像
ブラジルにて


午後、故・中隅哲郎さんのお連れ合いのお宅を訪ねる。
まずはご仏壇に。

行年(満)六十四歳か。
今の僕は中隅さんより歳をくっているとは。
まるで実感がない。

大・中隅は年齢でもとうてい超えられない存在だと思い込んでいた。
在野にして「ブラジル学」を提唱し、優れてかつ読みやすい著書を何冊も遺してくれている。
興味のある方は、ぜひ検索されたい。

中隅さんを読み直そう、と思いつつもしばらくご無沙汰してしまった。
中隅さんの著作はわが家に来た人に持ち出されないで済んでいる、はず。

お連れ合いとは共通の知人の話などが尽きない。
今日はこちらでの僕の結婚式の時の、思わぬ話を聞いてしまった。
この話は聞いた覚えがないように思う…


9月6日(金)の記 サンパウロのセントロでソースのソースを想う
ブラジルにて


セントロは「中心街」の意。
午前中、東洋人街に用足しに出る。
ついでにチャイニーズの食材店で買い物。

・・・昼は、外食とするか。
かとって日本から帰ったばかりで東洋メシを食べることもなかろう。
そもそもこのあたりは、どこもごちゃごちゃしている。

セーのカテドラルの方に歩く。
ここは混み合っているし、高いんじゃないかなと思っていた店が、表の掲示を見るとリーズナブル。
金曜の魚定食の魚種を聞くと「メルルーサ」の由。
決まり。

オレンジジュースを頼む。
なんと、入れ物はぱっとしないが、600cc入りのプラスチック容器になみなみと、ガラスのコップとともに持ってきてくれた。
火曜に行った店の、倍以上ありそうだ。

魚フライはトマトピューレにタマネギなどを煮込んだソースがかかっていた。
ブラジルで魚フライを食べるたびに、つくづく日本のソース文化はありがたいと思う。

わが少年時代の液体調味料と言えば、醤油かソース。
ソースというのはあのこげ茶色のウスター系のものだけが存在すると思っていた。
その後、日本の「ソース」も中濃、とんかつ、とヴァリエーションを増していき、ドレッシングも販売されるようになってきた。

ブラジルにもウスター系のソースや日系メーカーの「とんかつソース」は存在するが、まずレストランに置かれていることはない。
せっかくの魚フライも、塩コショウで下味が付いているとはいえ、ソースなしで供する店もあり、なかなか興ざめである。

ちなみにこちらの金曜定番の魚フライ定食は、やや値段の張る店では小エビを混ぜたトマトピューレ系のソースがかかっていることがしばしば。

今日の店はソースにエビがない分、お値段控えめだったのかも。
ウエイターのおじさんのサービスがよく、食後はコーヒーまで持ってきてくれた。
勘定にサービス料が入っていなかったので、帰り際、おじさんに小額紙幣を手渡す。

フェイスブックに、料理の写真あり。
https://www.facebook.com/photo/?fbid=10231192698255785&set=a.3410845544903


9月7日(土)の記 海に老いるもの
ブラジルにて


スーパーで安売りのエビを買ってきてある。
中サイズといったところ。

土曜の昼になにかしようと思って。
パエリャにするか、エビチリにするか…

さて、ブラジルでX(ツイッター)が停止されて一週間。
これを見ていた時間、その分フェイスブックをよけいに見るようになった。
けっこうこれまでも見逃しが多かった。

折しもフェイスブックでエビのレシピが流れてきた。
ふむ、エビとブロッコリのパスタか。
わるくない感じ。

牛乳使用、トマトソース使用などいくつかあり。
鶏ガラスープの素を使ったものにしてみよう。

家族にもそこそこ好評。

海の老人の頭と長い髭は味噌汁用にキープ。


9月8日(日)の記 続・日曜日にはイワシを揚げろ
ブラジルにて


路上市で、イワシを2キロ弱購入。
昼に身内が来ることになり、イワシフライをこさえることに。

一部はこころみに昆布締めにしてみよう。

先回の「日曜日にはイワシを揚げろ」は7月28日か。
2-3匹ずつ揚げていくので、そこそこ時間がかかる。

一同には先に食べ始めてもらって。
換気扇のない台所での揚げ物は、なかなか。

揚げ終わったら、まずはシャワー。
Tシャツはともかく、下着までアブラくさくなっている。

食事は、おおむね好評。

イワシフライには、やはり日本のトンカツ系ソースがよろしい。
今度はタルタルソースもつくって添えてみるかな。


9月9日(月)の記 大学のストレンジャー
ブラジルにて


今日は午後からこちらの身内のお世話の泊り当番。
ショートカットでサンパウロ大学学園都市内を通過。

今日はここで寄り道をしよう。
なんといっても広々とした緑地で、人口密度は日本の都市部の大学より数ケタ低い。

車を停めて、グラフィティ探しを兼ねてまったり歩く。
すでに何度か踏査している建物内に入ろう。

と、若者から呼び止められた。
「このなかにレストランはありますか?」
「この奥にありますよ」
荷物を届けに来たらしい。
こっちもこうしたことを尋ねられるとは、不審なストレンジャーというより大学のスタッフと見られたのだろう。
わるい気はしない。

これまでは午後の遅い時間だったせいか、閉まっていたランショネッチ(軽食のできる売店)が開いている。
「まだいいですか?」
と確認してスナックとカフェコンレーチェ(ミルクコーヒー)を頼む。

オープンスペースなので、なんとも心地よい。
特に知り合いもなく、用事もないという気楽さ。

キラク映像作家とはよく言ったものだ。


9月10日(火)の記 脂カツのトラウマ
ブラジルにて


朝、泊り先の高層住宅から眼下の大通りをみると、例によってぎょっとするほどの車の量。
これが落ち着くまで待機。

帰宅後、東洋人街に用足しに。
・・・昨日からの炊事当番疲れもあり。
昼は、なにか外食するか。

いまやフィリピン料理屋まである東洋人街だが、値段が外からわからない店はパス。
そもそも日本から帰って来たばかりでアジア飯でもないだろう。

ブラジル大衆定食のテキトーな店を探す。
と、東洋人街のメインのガルボンブエノ通りに面したバール(大衆食堂兼一杯飲み屋)に掲示された値段が、まあリーズナブル。

牛カツ定食とオレンジジュースをオーダー。
・・・付け合わせはフレンチポテトかポテサラかと聞かれてポテサラを頼んだが、フレンチポテトだ。
ま、いいか。

牛カツにナイフを入れる。
うわ、脂身ばかり。
ステーキだったら除去する部分だ。
思い切ってほおばると…

味の記憶。
日本の小学校時代の給食のトンカツ。
あれも脂身が多く、噛み切れないことが多かったなあ。

牛カツは、家庭で作った方が無難かつおいしいな。
今日のはレバーかと思うような味わいだが、脂身があるのでレバーではないだろうな。
(脂肪肝、だったりして。)


9月11日(水)の記 Um Artista da Fome
ブラジルにて


さあ、今日は一日断食だ。
今回、ブラジルに戻ってから二度目。

・・・、カフカ原作で、足立正生監督が映画化した『断食芸人』というのがあったな。
ポ語では、なんというのかな。
検索。
「飢えの芸人」か。
この映画は日本で封切り料金はたいて見にいったのだが。
疲労激しく、映画館の快適な椅子で爆睡してしまった。
西暦2016年か。

断食の日は、かえってカフェに行きたくなる。
断食中のコーヒーの摂取については検索すると賛否が極端に分かれる。
・・・やめておいたほうがよさそう。

こういう日はガソリンスタンドに付随したコンビニに行こう。
砂糖なしのペットボトル飲料を買って、イートインスペースで一服しながら喉を湿すことしばし。

今日は修繕を頼んでいた靴のピックアップに行って。
このお店は、おばちゃんががんばっている。

その足で、向かいにあるスタンドへ。
炭酸水を購入。
のこりは持って帰ろう。


9月12日(木)の記 ニュースを煙に巻く
ブラジルにて


SNS、そして新聞紙面でアマゾンの大干ばつ、そしてブラジル各地での山火事が大きく報じられている。
その塵芥の影響で大サンパウロ圏は世界の都市部で最悪の汚染レベルになっているという。
・・・あまり実感がない。

久しぶりに夜のテレビニュースをつけてみよう。
こっちでわが家のテレビをつけるのは…パリ五輪以来か。

リオなどでは市街地近くまで火がおよんでいるようだ。

西暦1980年代の終わり、アマゾンの森林焼却が世界的な問題になった時。
アマゾンの森の焼かれる現場に滞在して、炎をみつめる記録を考えたことがある。
なにかそうした現地と縁があれば、と。

いまだにその機会はないままでいる。
そうこうしているうちに、祖国日本が第三の火で滅んでしまうかも。


9月13日(金)の記 ピエタの首
ブラジルにて


その日暮らしのワタクチとしては、珍しく来年のことの手配にオンラインでかかる。
さてどうなるか。

所用でセントロ:サンパウロの中心街に出る。
それに抱き合わせてボンレチーロ地区へ。

あらたな企画展開催中のサンパウロ聖美術館ものぞいておこう。
この美術館は地下鉄の最寄り駅チラデンテス駅構内に分館があり、しかも無料でありがたや。

分館では、サンパウロを中心とした民衆レベルのカトリック信仰のテラコッタ類の展示。
きんきらぎんぎらではない、土と焼き物の温かみが伝わってくる。

迷うが、「今日のアート」はこれにしよう。
https://www.instagram.com/p/C_4p96LONx9/

18世紀につくられたピエタ像。
イエスの首を欠いている。
首を欠くことで、かえって無限の想像を掻き立てるではないか。

富山妙子さんの版画『光州のピエタ』、ミケランジェロのバチカンのピエタなど、いろいろ見てきた。
が、首を欠くものを意識的に見たのははじめてだと思う。

想えば縄文土偶、ギリシャの塑像、廃仏毀釈にあった仏像など、首などを欠損する偶像は少なくない。
ブラジルの守護聖母となった黒いマリア、アパレシーダの像も首が欠けたので川に捨てられたのでは、と言われている。

ああ、今日もうひとつわが眼を射たのは美術館本館にあったヴェロニカ像だった。
これはずばり、十字架の道行きのイエスの顔のプリントだ。


9月14日(土)の記 ソーセージの創世記
ブラジルにて


腸詰なんて言葉もあまり接しなくなったな。
して、ソーセージの語源は?

ふむ、これも塩(ポルトガル語だとsal)から来ているのだな。

ふだんからわが家、そして出先での献立を考えていることしばし。
久しぶりにソーセージ専門店に行ってみるか。
わが家からメトロで3駅ほど。

創業開始1949年か。
ゴジラ誕生より古いぞ。
「世界一のソーセージ」との評判も。

オーソドックスのと、ツマミ用のとをひと通り説明を聞いてから購入。
・・・お値段のほどは、そこいらのものの倍以上。
2倍半といったところ。
まあ、たまにはいいでしょう。

ウイキで調べると、ボツリヌス菌の名称もソーセージ由来とか。
赤いウインナーは日本独自のものであるとか、なかなかウンチクが面白い。
ブラジルのホットドッグ用のも赤く染めてあるけどな。

ウイキにふたつ掲げられていることわざがいい。
ソーセージと法律(政策)は作る過程を見ない方がいい(ドイツ)
ソーセージの中身は肉屋と神様しか知らない(スウェーデン)



9月15日(土)の記 洗面器一杯のレタス
ブラジルにて


午前中に路上市へ。

わが家でレタスを切らしていたな。
安売りの店でみてみよう。

うわ。
洗面器一杯やまもりで5レアイス。
ここのところ円がややぶりかえして、換算すると約130円といったところか。
なにもかも日本より割高になってきたブラジルだけど、これは安い。

(品種名を調べてみる…)
緑のグリーンリーフと紫のサニーレタスのもりあわせを購入。
売り手の方もビニール袋ひと袋では収まらず、ふた袋に分けてくれる。

人はレタスのみに生きるにあらず、かどうか知らないが、レタスを主食にできそうな量だ。
グレゴール・ザムザか。
生産者、輸送者、販売者に申し訳ない思い。

ポロネギ、さらにイタリアントマトのローマ種(これも後で調べた)を安売りのスタンドで購入。

帰宅後、さっそくレタスを洗っていただく。
...とりあえずナメクジやカタツムリの付着はなさそうだ。


9月16日(月)の記 九月の雨
ブラジルにて


アマゾンでは大干ばつ、そしてブラジル全国さらに南米各地での深刻な山火事。
サンパウロ市では切望の雨がこの日曜に見込まれていたが、一日ずれ込んだ。

塵芥をたっぷり含んだ「黒い雨」が降ると言われていたが。
こちらの親類の、まだ新築の部類の高層アパートに泊まったためか、雨音にも気づかなかった。

朝の交通渋滞が収まるのを待って、車に向かう。
わが愛車は野外の駐車場。
おお。
訪日中に屋内の駐車でクルマに積もっていた塵芥がきれいに雨で洗い流されている。
フロントガラスもきれいさっぱり。

今週には洗車の出そうと思っていたけど。
内部は特によごれてもいない。
これは思わぬお恵み。


9月17日(火)の記 源流域の森林火災
ブラジルにて


今日も冷え込む、
さあ今日は一日断食。

修繕を頼んでいたバッグを取りに行こう。
今年、日本で雪中行軍のために買った靴の底がだいぶすり減って。
その他の部分はしっかりしているので、惜しい。

以前、近所で他の店ではできないと言われた靴底を替えてくれたところを思い出した。
そこに行ってみると、店にいるのはおじさんからおばちゃんに代わっていて、わが予算の範囲の金額でやってくれるという。

ここが気に入って、今度は手前のファスナーの壊れたバッグを持ち込んでいた。
今回も見積もり幅の最低金額で直してくれた。

彼女は片道3時間かけて、郊外の農地から通っているという。
サンパウロ州を貫くチエテ川の源流域からだ。

そのあたりの雨模様、森林火災の現状を聞いてみた。
付近のユーカリ植林地が伐採を目前に燃えてしまったという。
おお、これは見落としていた視点だ。
大量の水を消費するユーカリ林は、乾燥が激しい。

火元について聞いてみると、彼女の観察と考察はなかなか鋭くて面白い。
・・・誰だったか、こんな女性がいたのを思い出す。
以前、使った旅行社の雑用係の女性だ。
彼女も郊外から通っていたが、自宅付近の野生観察が鋭かった。

ふと、移民小説家の松井太郎さんを想い出す。
松井さんもこうした身近なブラジル人から話を聞いて、物語を紡ぎ出していたのだろうなあ。
サンパウロ市に移る前の松井さんもこのチエテ川の源流域で暮らしていた時期があったなあ。


9月18日(水)の記 パーソナルスペース
ブラジルにて


プライベートの動画の編集作業に入った。
視聴するのは関係者だけだろうが、どのような語り口にするか。

最低限の情報は施した方がよかろう。
撮影の場所と日時。
被写体の人物のこと、撮り手の僕のこととその関係など。

アタマのなかで文案を考える。
午後にでもカフェかバールにでも行った際に書き出してみるか。

さて、午後。
今日は遠出は、なし。

買い物のついでに、アヴェニーダの向かいにある角のバールに行ってみる。
空いている時間で、通りに面した席をとる。
キビというアラブ起源のスナックと、すでに砂糖の入ったカフェコンレーチェ(ミルクコーヒー)が運ばれてきた。

と、路上から「コーヒーおごってくれよ」とかなり強烈ににおう男が接近してきた。
驚きあわてて、ただ「NÃO(否)」と言って防御の体制をとる。
この付近の交差点で通行人が路上生活者から石で殴られて負傷するという事件も生じている。

鶴岡の喫茶店「コフィア」で求めた嶋中労さんの『コーヒーの鬼が行く』(中公文庫)を読み終えたところ。
このなかに「パーソナル・スペース」についての言及があった。
検索してみると、さっそくこうある。

他人が近づいてくると不快に感じる空間や距離(=心理的距離)のことを指す言葉です。
動物が自分自身の縄張りを侵されると威嚇や警戒をするのと同様、人間もあまりに近寄られ過ぎると不快感を覚えます。

( https://www.wel-knowledge.com/article/engagement/a153 #)
自らコーヒーを淹れる喫茶店主が、初めての客にいきなり自分の目の前のカウンター席に座られるとこれを感じるという。

オカムラのサベツ意識のあらわれだ、と言われればそれまでだ。

が、こちらが彼の領域を犯したのではない。
ささやかなポケットマネーで作業の合間の一服と喫茶、そして少しクリテイテイヴな書きものをしようとしている時に、いきなり僕にとって不快臭ともに至近にやって来られては…

かつ、なおもこの席に座っていては彼がなにか攻撃を仕掛けてくるかもしれない。

雑記帳を取り出す気もなくなった。

ゆるくてお気に入りの店なのだが、今後は道路寄りの席はやめておこう。


9月19日(木)の記 60年目のマクド物語
ブラジルにて


わが家ではパソコンに向かってルーティンの作業と動画編集。
外回りは…

3件の用事がある。
うち2件を今日、すませておきましょう。

最初の用事を済ませてから、二駅の距離を歩いて東洋人街へ。
ここでの所用のあと、帰宅前にトマカフェ(喫茶)のいっぷくがしたい。

このあたりは気のきいた店は平日でもたいへんな混み合いだ。
思案のしどころ。

最近オープンしたカタカナで「ミルクセーキ」と書かれたピンクづくしの店がある。
が、今日は客が誰もいない。
そういうところにワタクチがひとりでというのも不気味。

・・・マクドナルドでも思い切って入ってみるか。
店頭に貼り出されたメニューをみると、けっこう格安のセットもあるではないか。
トーテムでそれにたどり着くのにひと苦労だったけど。

西暦1995年。
拙作『60年目の東京物語 ブラジル移民女性の里帰り』の主人公・森下妙子さんと出会ってまもなく。
当時、80歳だった森下さんはここをひいきにしていて何度かデートをしたものだ。
その頃は店内から地下に降りる階段があり、その先はオープンスペースの日本庭園風のベランダになっていた。
斜面地の巧みな利用だ。

東洋人街ながら、顧客はほとんど非東洋系のブラジル人たち。
学生街でもあるので、若者も多い。
そこそこの人の入りだが、たいてい空き席にあるつけたものだ。

さて、最近はどうなっているのか。
地下への階段はなくなっていたが、店内の奥にオープンスペースのベランダがあり、やはり日本庭園風にしていた。
サンパウロはさる週末からうすら寒くなったが、ベランダスペースもうすら寒いぐらいの人の入り。

いやはや稠密のリベルダージにこのぼんやり空間はありがたい。
ダメもとで持参した資料をひとつ読み切ってしまう。


9月20日(金)の記 サンパウロのアキバの賭け
ブラジルにて


今日は拙作『アマゾンの読経』の主人公にして、伊豆大島富士見観音堂の開祖・藤川真弘師のお命日。
この日を失念していて、思わぬ事態になったこともしばし。

今年はきっちりと覚えていました。

昨日やり残しのことに挑むか。
場所は、サンパウロの秋葉原といわれるダウンタウンの電気屋街。

すでにメーカーも対応しなくなって久しいビデオ機材の修繕。
2年前のことだ。
ひとつはチャイニーズ系らしいところが引き受けるといい、ぶじ修理がかなった。
もうひとつはパラグアイ人の技術者のところで部品を調達してやってみるという。
手付金を払って、年が明けた。

さらに何か月か経ち、ようやく部品が入手できる見通しがついたが経営が厳しいのでまず残金を払ってほしいという。
これまでのやりとりからどうも怪しく、全額はやめておいたが、また支払って。

その後は先方は電話に応じなくなってしまった。
なくても作業はなんとかなる機材でもあり、こちらも訪日が続き…
時折り電話をしても、応答がなくなってしまった。

夜逃げか、廃業か、あるいはこっちの番号をブロックしているのか。
パラグアイ人の夫婦の経営で、ふたりとも悪人ではなさそうだったけど。

さてこちらは「恩を仇で返す」日本の変質者から今も迷惑行為を受け続けている。
この苦い体験から、他人を信用する・慈善を行なうといった方面に慎重にならざるをえなくなっている。

夜逃げならともかく。
先方がこの変質者のように虚偽捏造を展開してきたら…
修理は済んだのにアンタが受取りに来ないから、機材は転売したし手付金ももう期限切れで返却できない、と居直られたら?

うーむ。
その場合は相手の言い分をスマホに録画するか。

さて一角はブラジル生まれの親類も「危ないから」と近寄らない一帯。
雑居ビルの上階に階段で上がる…

おや、店は…開いていた。
パラグアイ人のおばちゃんが寄ってくる。
こっちのことは忘れたかな?
おばちゃんは奥のおじちゃんにスペイン語で尋ねる。
おじちゃんいわく、もうできているので清掃して来週の水曜には持ってくる、と。
電話番号は変わったと言う…

意外な展開。
ホントに修理できたのか?
そうすると、残金も用意しないと。

あらためて、あの日本の迷惑男が極めて異常な存在だと再認識。


9月21日(土)の記 海と油
ブラジルにて


昼。
家族と外食することになった。

SNSで流れてきたシーフードの店に行ってみよう。
メトロで二駅先から少し歩くようだ。

うわ、ライブ演奏を店頭でやっている。
上の階の奥のベランダ改装部分に席をとる。
ひゃあ、ここは揚げ物の油がこもっているが、まあ仕方ないか。
申し訳ていどのエアコンがあるが、ここから換気扇の油の排気が送られているのではないかと思うほど。

オツマミ系食べ放題というのを頼む。
14種のオツマミ系をよりどりみどり。
ひと通り頼んでみるが…

どれも基本的に揚げ物。
ムール貝のヴィネガーあえがあるが、これは冷凍と解凍を繰り返したようで、水っぽい。
14種のなかで、フライドポテトがいちばんさっぱりしていたかも。

瓶ビールの後でカイピリーニャを砂糖抜きで頼んだものの、しっかり甘い。
ま、ブラジルだし、甘く見ましょ。


9月22日(水)の記 蕪の大葉にみせられて
ブラジルにて


日曜の路上市へ。
...レタスは先週の「洗面器買い」のがまだ残っている。

うわ、なんとも見事な葉をしげらせた蕪がある。
これは、そそる。

他の野菜のスタンドも見てみるが、最初のが一番いい感じ。
買うか。

葉の部分がたっぷり過ぎて、売り子は奥に大袋を取りに。
蕪の葉は大根葉以上に使い道が多い。

さて、葉の部分は早めにさばかないと、しおれ、かつ黄ばんでくる。
今日の炊事当番先に担いでいって。

蕪そのものを千枚漬けに。
その残りと葉っぱを味噌汁に。
さらに葉っぱの一部をさっとゆがいでサラダ風おひたしに。

・・・あとはまたわが家に持って帰って漬け物等にするか。

ファスナー袋に入れて、冷蔵してあった即席千枚漬けを夕食時に出し忘れてしまったけれど。


9月23日(月)の記 シドニー、日本へ
ブラジルにて


午前中にわが家に戻る。
さて。

サンパウロの封切館で『シドニー、日本へ』(おそらく仮題)という奇作がかかっているのを知った。
こういうのはいつまで公開が続くのか危ないというもの。
日本が舞台だが、フランスなどの合作映画。

月曜は入場料も安いし。
思い切ってアウグスタ街の映画館へ。

オーストラリアのシドニーかと思ったら、フランス人の女性の名前だった。
家族を亡くし、物書きとなったシドニーは筆を断っていたが、日本の編集者の熱心な依頼を受けて訪日を決意する…

上映開始前に映画の長さをスマホでチェックするとこの映画は「コメディ」と分類されていた。
どっちかというと、ホラーだ。

冒頭から日本と日本人に対するキツい風刺が展開されて、ここちよい。
大阪から京都、奈良、カボチャの直島、そして大霊都・東京へ。

東大寺大仏殿や新幹線の車両で、このシドニーと日本人・溝口しか映り込まないというのが印象に残る。

日本人は、なき人たちとともに生きている、というお話。
そうかえ?

日本で劇場公開されるかどうかは、ビミョーなところ。


9月24日(火)の記 怒中有和
ブラジルにて


・・・、。
「いかり」の反対語・対義語を検索してみた。
へえ。
「いかる」の反対語は「わらう」とな。

ちょっと違うような気がする。
いまの僕の対義語をあげるとすると…
「なごむ」かな。

作業に差し障りそうで、午後から気分転換に出る。
CCSP(サンパウロ文化センター)で変わりダネの特集をやっている。

西暦1960年代にサンパウロ州内陸の町でサーカスや演劇の興行をしていたEXPLYM一座がその後、8ミリやVHSで製作した映画の特集。

「あまり」他人様の映像を見なくなって久しいが…
かつては「8ミリ映画祭」の応募作品の「下見」作業を仰せつかっていたこともある。
今世紀になってからは、水戸の市民の作成した映画の審査とか。

さて、今日の映画は…
メインの作品は、VHSの撮影のようだ。
ブラジル独自のビデオ方式PAL-Mと日本やアメリカなどのNTSCが「ちゃんぷる」になっているようだ。
あれもこれも、あえて「どアマチュア」風味を出しているのかと思ったが、そうでもないらしい。

いまも僕あたりが30分の一秒の単位で気をもんでつむいでいるものとは、次元が違うようだ。

最後のスタッフクレジットの後で「NG集」があったが、本編とまるで違和感がないというか、かえってこっちの方がリアリティあり。

まあ、わが見聞は少し広まったかも。


9月25日(水)の記 中国的絵本
ブラジルにて


昼過ぎまで動画のチェックと編集作業。

今日は、というか今日も、というか、ブラジルの映画を見に行こう。
その前に!

目的地の至近のマクドナルドの所在をチェック。
あるのは知っていたが、おそらく入ったことのない店に行ってみよう。

まず店内で確認。
お子様セットの付録の絵本、この店にはあるようだ。
いざ、そしてついに。

ブラジルの国民的マンガ家・マウリシオさんの作品。
少女が主人公と少年が主人公の2種類あり。
少女でいきましょう。

絵本らしく、ハードカバーのつくり。
マウリシオさんの通常の作品のような「ふきだし」ではなく、絵本式の地の文が書かれている。
なんと、絵本の製作国は中国で、ブラジルへの輸入品と「奥付」にあり。

ブラジルは日本に勝るとも劣らぬ絵本大国だ。
マウリシオさんのようなビッグネームではなく、日本のマクドのように若手・中堅の意欲的な作家を発掘してもらいたい。
そして、絵本そのものを買うよりずっと安いこのお子様セットで作品を提供してもらいたいものだ。


9月26日(木)の記 ハニー・グランパ
ブラジルにて


サンパウロはまた本来の暑さがぶり返してきた。
わが家での水分補給に…
同じようなのが続くと、飽きも来る。

マテ茶はどうかな。
アイスにして。
甘みは、ハチミツでいきたい。

おや、使いかけのハチミツが見つからない。
いずれにしろもう些少になっていたので、買い出しに行こう。

わが家至近の自然食品店はオーナーが自分は養蜂も経験があり、ハチミツにはうるさいと言っていたが、店を閉じてしまった。

近くのスーパーに行ってみるが…、ない。
さて。
駅前の、なんでも屋に行ってみる。
スナック類から日用品まで、ごちゃごちゃとある店。

おう、あったあった。
むむ、何種類もある。
ラベルもオシャレで、自然派が嗜好しそうなガラス瓶入りのものを手に取る。

向かいにはプラスチック容器のものが何種類かあり、これはそのまま注げて使い勝手がよさそう。
見比べていると、声をかけられた。

「ハチミツをお探しかな?」(ポルトガル語)
80歳前後ぐらいの白人系の老紳士。
店員ではないようだ。

プラスチック容器の、より値段の安いものはお話にならない、蜜源の植物の記載のあるものの「ユーカリ」ではなく「野生植物」とあるものがまずは無難、と教えてくれる。
この2種の違いを尋ねると、ユーカリの方は色が濃い、味の違いは好みによるが、とのこと。

なぜそんなに詳しいのですかと聞くと、サンパウロ州の内陸で養蜂に関わっていたことがある、とのことで、簡単なニホンゴまで披露してくれた。

・・・、トンデモな悪意にさらされているだけに、こうした善意がうれしくありがたい。
日本語とポルトガル語でお礼を言う。

帰宅後、さっそくマテ茶を濃いめにつくってハチミツを溶かし、氷とライムを注いでおいしくいただく。
うむ、いくらでも飲めてしまう。


9月27日(金)の記 えほんのふろく
ブラジルにて


まず、パラグアイ人の機材修理の件。
今週の水曜にはピックアップOKとのことだった。
が、水曜以降、変わったという電話番号にかけてみても応答がない。
文字メッセージも送る。

また直接、乗り込むしかないか。
と、今日の昼過ぎにメトロに乗ったところでメッセージあり。
来週になる、と。

・・・この調子で1年半以上、経過。
今日は他の用事も抱き合わせたので、とりあえずリベルダージ駅まで行くことにする。
最初の用事を済ませて。

マックにまた行くか。
東洋人街のマクドのお子さまセットには、まだ僕のゲットしていない絵本がある。
あいかわらず奥のベランダスペースは空いているし、時間調整にちょうどよい。

それにしても。
日本の幼少時代を想い出す。
月刊の子ども雑誌には、付録がつきものだった。

して、寺社の縁日の大きな規模のところの出店には雑誌の付録屋があった。
僕の当時の守備範囲圏では、油面地蔵通りの三の日の縁日規模では付録屋はむずかしかったが、二十八日の目黒不動の縁日ならほぼ確実だった。
『小学〇年生』といった雑誌は、まず別の学年のものは買うことがなかったから、人気漫画家の付録マンガなどはありがたかったものだ。

いまやそもそも本屋さんが東横線祐天寺駅前からも絶滅してしまう世となった。
絵本が欲しくなったら、祐天寺駅前のマックのハッピーセットを頼むしかないか。

そもそも、オトナ向けの商品にも冊子や豆本の景品があってもいいように思う。
こういうの、あったっけ?
まあ僕の嗜好は世間一般とはそこそこのズレがあるのだけれども。

ブラジルのマクドナルドの、次のお子さまセットの絵本企画が楽しみだ。


9月28日(土)の記 ブラジリアンイタリアントマト
ブラジルにて


家人から、イタリアントマトの買出しを頼まれた。
わが家から西方に下がったところの、土曜の市に行ってみよう。

日本でも昨今は高級ぎみのスーパーにいくと、さまざまな形態そして色とりどりのトマトが出回っている。
ところが、このナスビ型のイタリアントマトはあまり見た覚えがない。

サンパウロでもいつでもどこでもあるわけではなく、今はシーズンのようで路上市では熟れ熟れのを安売りもしている。

ウレウレのはなかなかあまくてよろしい。
日本の甘いトマトとはあまみが異なり、こっちの方が自然な感じ。

こころみに「イタリアントマト」を日本語で検索すると…
おや、「イタリアントマト」というカフェなどのチェーンがあるのだな。
ヒットするのは、こればかし。

通販ではない、ほんらいの「アマゾン」を知りたくて検索をするようなもの。


9月29日(日)の記 こどものためのハンナ・アーレント
ブラジルにて


ブラジルを代表する新聞社FOLHA DE S.PAULOが刊行している絵本のシリーズ「子供たちのための思索家たち」シリーズが面白い。
というか、ためになる、というか勉強になる。

まずはポルトガルの文豪フェルナンド・ペソアを購入。
この説明のむずかしい巨人を、よくぞ咀嚼して書いてくれた。

ついでブラジル先住民のオピニオンリーダーで個人的にもかかわりのあったアイウトン・クレナッキを買って。
これのテキストもすばらしい。
ブラジルの子供たちに心地よい嫉妬を覚えるほど。

そして三冊目にハンナ・アーレントを買った。
彼女について説明せよ。
・・・たしかユダヤ人で、ナチスの迫害を逃れて、たしかアメリカ合衆国にわたって著述活動を、といった感じだっけ?

日本のリベラル、そして左派の人の書きものにしばしば登場する。
名前には親しみ、短い引用ぐらいは読んだことがあろうが、著作(もちろん訳本で)そのものには接したことはない、恥ずかしながら。

日本の中学高校と、日教組や民青系の教員はいたが、さすがにその頃、ハンナ・アーレントを持ち出すような強者はいなかった。
日本で言及されるようになるのは、もっとあとになるのだろう。

それにしても。
ブラジルでは「こどものための」である。
ブラジルは初等教育が8年だが、そのあたりがターゲットだろう。
日本でいま、小中学生にハンナ・アーレントを語るような教員は存在するだろうか?

この絵本のなかでも彼女の説く「悪」について言及されている。
まず僕自身、この絵本をよく読み込まないと。


9月30日(月)の記 月曜日のモクテスマ
ブラジルにて


サンパウロ市内の親類宅で起床。
午前中のラッシュが少し収まるまで待機。

今日は帰路、ミネラルウオーターの源泉に給水に寄る。
ここは無料の駐車場に車をとめておける。

ストリートアート探しを兼ねて、近くの気になるところまで歩く。
ヴィジュアル面で、僕にとってもっとも衝撃的な古本屋。
発見してから数年になり、何度か尋ねている。
だが「昼食のため外出中」とあったり、呼び鈴を鳴らしても誰も応じなかったり。

ナント、「売り屋」の表示が出ているではないか。
先回、訪れた時も「健康上の理由で対面での営業はできない」と貼り出してあったのだが。

お会いすることのかなわなかった店主は、体調がよろしくないままなのか、あるいは・・・。

さらに歩いて、どこか大衆食堂で昼食をとるか。
値段、店の雰囲気、混み具合などを考慮して…

月曜のヴィラーダ定食が値段控えめなところあり。
そこにする。
付近のブルーワーカーたちの飯処、といった感じ。

なるほど、値段の分、量も控えめでかえってよろしい。
フレッシュオレンジジュースも頼むが…

味に違和感。
そもそもあまり甘くない。
して、ケミカルなあじわいがあるのだ。

氷入りで頼んだが、水道水使用の自家製アイスだったかも。
それでいて、ついもったいなくてぜんぶ飲んでしまう。

会計の時にオレンジジュースは標準価格以上だったことがわかる。

・・・給水場からだいぶ歩いてしまった。
どうも、おなかの調子が。
あのオレンジジュースの「効果」がさっそくきたか。
近くの高級めのスーパーに「寄り道」するが、あってもよさそうなトイレがない。

源泉地には、お世辞にもキレイとはいえないがトイレはある。
いやはや。

便座のないトイレ。
が、背にハラは変えられない。

メキシコシティで外食いをして、ひどい下痢にひと晩苦しめられたのを想い出す。
ヤバそうな店では氷はやめておくこと、という原則をナメると。







 


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