11月の日記 総集編 負けた人の守護聖人 (2024/11/13)
11月1日(金)の記 奇景妙義山 日本にて
早朝に新宿発のバスで、軽井沢ミッション。 東北新幹線からだと遠景で垣間見るだけだった群馬の奇山が間近に迫ってくる。 ブラジル高原をゴイアス州からマットグロッソ州に抜けるあたりの奇岩地帯を想い出す。
軽井沢はミュージアムのハシゴ。 日帰りだと、時は金なりか。 新幹線代は惜しんだが、タクシー代は惜しまず…
まずは二度目の訪問となる千住博美術館。 千住画伯の新作『浅間山』に対面。 メイキングビデオを何巡か鑑賞。 わがプロジェクトに備える。
開館してほやほやの安東美術館をハシゴ。 秋田で、藤田嗣治の作品との再会を逸した。 だが、日本で、しかも一か所でこれだけフジタを見れるとは! ちょっとひるむ高額の入館料に見合うものあり。
11月2日(土)の記 聖母グアダルーペと原発 日本にて
いまや訪日時の東京滞在中も、東京の実家には泊まらずに都内のホテルに宿泊するようにしている。 いっぽう故郷目黒の「ふげん社」で興味津々のイベントが開催されたことを知り、目黒へ。
メキシコ在住の写真家にしてアーチストの矢作隆一さんがグアダルーペの聖母像をメキシコの原発はもとより、日本各地の原発とともに写した写真展!だ。 https://fugensha.jp/events/241101yahagi/ その発想に圧倒される。
今日は矢作さんと写真評論家の飯沢耕太郎さんの対談もあり、これに参加。 質問もさせてもらう。 対談後のレセプションで矢作さんともう少し話をと思ったが、知人らとの談笑が続いている。 飯沢さんとも共通の知人が複数いるので、声をかけさせていただく。
あとの予定もあり、矢作さんへの声がけはあきらめて次のミッションへ。
11月3日(日)の記 「負けた人の守護聖人」 日本にて
今日の日本は、文化の日。 そして映画の初代『ゴジラ』が公開されて70周年。
この日を記念して長期熟成させたわが『千住博 南米流転』シリーズ「第一巻・いざイグアスー」をYouTubeにて公開開始する。 https://www.youtube.com/watch?v=JZ3Q4xvkSy8
さていろいろな調整と偶然が相まって今日はカトリック成城教会の日曜のミサにあずかることになった。 遥かなる学生時代には、駅の反対方面で遺跡発掘の日々を送っていた。
『カトリック成城教会報』に山本量太郎主任司祭が「弱き者の強き味方ー聖タデオ」について書いている。 カトリック成城教会は、聖タデオ教会でもあるのだ。 聖タデオはサンパウロで身近な存在なのだが、いまひとつ何者なのかがわかりにくかった。 山本司祭は聖タデオは「弱き者の強き味方」であり「負けた人の守護聖人」であるとする。 タデオさんが、さらに身近になった思い。
今日もいろいろあった。 午後から、生涯初の同窓会に出席。
明日に離日が迫り、一次会にて失礼する。
11月4日(月)の記 市中銀行 日本→
市銀とは、市中銀行の略だと検索してみて知る。 カレー銀行の方がいいな。
あらたな出ニッポン当日となった。 金融関係を今日いっきにまわるつもりだったが…
今日は振替休日だった! それでも二つの市銀は東京のホテルの近くのATMで金銭の出し入れができた。
問題は「ゆうちょ銀行」。 もよりの中規模の郵便局に行ってみるが、ATMも機能していない。
ネットで調べると、羽田空港にあるゆうちょ銀行のATMは夜間でも使用可とある。 夜、実際に行ってみると… 使えないではないか。
ゆうちょ銀行とやら、市銀にはるかに後発して、はるかに劣るサービスとは。 日本国そのものを反映している感あり。
11月5日(火)の記 ターミナルアート →アラブ首長国連邦→ブラジル
羽田で到着機の遅れで、約1時間の出発遅れ。 ドバイ着も約1時間の遅れ。
そもそも接続時間は、行きより短い。 到着はAターミナルで、サンパウロ行きはCターミナルとな。
歩いて20分以上の表示。 あるけあるけ・・・
おや。 途中でこんな展示があった。 https://www.instagram.com/p/DCNDw0TPA4Z/ サルガドの『創世記』を彷彿させるモノクロの動物写真。
むむ、じっくり見る時間がない… Chris Fallowsは南アのサメの研究者で写真家の由。
エミレーツ航空でドバイからサンパウロまで15時間強。 その間、客室乗務員がトイレの手入れをしないので、紙はなくゴミはあふれ悪臭でびしょびしょ…
11月6日(水)の記 オペレーション・トクラ ブラジルにて
時差ボケ全開。 このつらさを、なににたとうべき。
それでも外出。 うーむ、グラフィティ類も特に代わり映えせず…
アナクロ感のあるこのポスター群を今日のインスタ用に撮っておく。 https://www.instagram.com/p/DCOAcXruYwp/
わが腸内フローラの欲するものを食する感あり。
11月7日(木)の記 サンパウロの古民家カフェ ブラジルにて
しばらくご無沙汰していた近くの古民家カフェ・レストランに行ってみる。
日本語の古民家の定義を見ておくと。 「築50年以上」「築50年以上の木造軸組み工法の住宅」等々。 ブラジルの場合は「木造軸組み工法」というのは当たらないだろうけど。 こっちのはレンガ積み上げ工法、とでもいうのだろうか。
この店は中庭部分をテラス席にしているのが魅力だが、今日は小雨模様。 離れの建物に案内された。 この離れも内部が利用されていたのか。
夏場は藪蚊の存在が玉に瑕だが、まだその時期ではないようだ。 離れの窓から、雨に湿った庭木の幹を眺める。 ナメクジでもいないかな…
ここの食事は値段が高めで敬遠していたが、それだけの量はあった。 食べきれなければ持ち帰りオッケー。 しかもその容器は無料で、自分で詰めるシステムというのもよろしい。
店員が気を聞かせてくれての、思わぬサービスもあり。
11月8日(金)の記 本責め ブラジルにて
今度の訪日で買い求めた書籍類の整理もまだ終わっていない。 今回は訪問先であれこれ書籍や資料類を買ってしまい…
ネットで取り寄せようと思っていた書籍類は断念する。 荷物のキャパ・重量問題もあり、入手したもののブラジルに持参するのを見合わせる書籍も増えてくる…
そんな状態ながら、年に一度のサンパウロ大学構内での大図書フェアが始まってしまった。 ブラジル全国の大中小の出版社が出店する。 うーむ、今年も行っておくかな…
今日はあいにくの雨。 クルマで出向くが、車外に出るのを見合わせるほどの土砂降りだ。 車中で、しばし待機。
さて、特設会場は…、 見ただけでくらくらする巨大さ。 さっと一巡するだけでも大変である。 すでに混雑して長蛇の列のスタンドも。
いやはやいやはや… 例年よりコミック系えほん系が増えたかな。 クオリティの高いものが多い。
図書大国出版大国ブラジルを痛感するとき。 して、書籍もさることながら「売り子」たちの温度差多様性も相当なもの。
こちらが手に取った本を「それ、私の特にお気に入りですよ」と声がけしてくれる売り子。 身内でのおしゃべりに熱中して、値段を聞くためにこっちが大声を張り上げてもわれ関せずの売り子。
いやはや疲れた… それなりの成果はあったけど。
11月9日(土)の記 ポルトガルをいただく ブラジルにて
年に一、二度は僕がどこがいいかを決めての家族での外食がある。 今日の昼、ダウンタウンのポルトガル料理屋を選ばせてもらった。 行ったことはないが、インスタグラムだったかで流れてきて知った。
この機会は、自分が食べたいというより家族の見聞を広めてもらいたいという願いがある。 近年ではアフリカ料理屋、インド料理屋など。
やや出遅れてしまい、あわや長時間、店外で空席待ちをするところだった。 干しダラのコロッケ、イワシの丸焼きに白ワインのサングリアぐらいから始めて。 タコ飯に干しダラと野菜の鍋、ヴィーニョヴェルデ… 店内はどちらかというと庶民的だが値段は高級。 まあ、話のタネだ。
・・・ダウンタウンを歩いていて、さほど危険を感じないところに落ち着いた雰囲気のイタリアンだったか海鮮レストランがあり、いずれ来れたらいいな、と思っていた。 しかし、これが具体的にどこだったか思い出せないでいる。 ひょっとすると夢で見たのか、脳内で作り上げたのか…
だんだん夢うつつになってくる。
11月10日(日)の記 電柱入墨 ブラジルにて
開始以来、4年半が経過した「今日のインスタ」。 当初の「今日のグラフィティ」を「今日のアート」に広げて今日に至っている。 これもサンパウロのわが家から遠出をしない日にはネタ探しがそこそこたいへん。
選挙時期には候補者のステッカーなどに「助けられた」のだが。 今日はこれまで見た覚えのないステッカーを二種、電柱で発見した。
いずれもタトゥースタジオのもの。 https://www.instagram.com/p/DCUIVPwu9FG/
彫り物師のステッカーを掘り出す。
11月11日(月)の記 パレスチナの八岐大蛇 ブラジルにて
時差ボケをまだ引きずっている。 あたらしい週も始まり、そうも言っていられない。
今週来週と休日もあり、こちらの身内の老人介護のローテーションも未確定。 ブラジル国内のミッションをどうするか…
さあまた一日断食だ。 今日も遠出の予定はない。
今日のインスタは、これにしておくか。 近くの大通りに面した壁に貼りめぐらされているポスター。 https://www.instagram.com/p/DCWu1xfOX2d/ パレスチナ支援のマニフェストと、帝国主義追放をうたっている。
毒蛇を握りつける力強い拳。 日の丸マークの毒蛇もあるではないか。 頭の数は…八つ。
11月12日(火)の記 リベルダジる ブラジルにて
所用もあって、東洋人街:リベルダージに出る。
一日断食の翌日なだけに。 がっつりとは食べられないが、小腹も空いた。
景品目当てでマクドナルドをのぞいてみる。 うーむ、いまは絵本の「付録」はなく、スーパーマリオのオモチャだけのようだ。 いらないし、リオのアレを想い出すではないか。
さてさて。 大通りの向かいのバール:大衆軽食店に入ってみる。 あまり落ち着ける店ではない。 カフェコンレーチェ(ミルクコーヒー)とコシーニャ(鶏肉が具のコロッケ風のスナック)をいただく。
コンタ(勘定)を頼むと… うへ、うちのあたりの1.5倍だ。 店の仕様も味もうちのあたりの方がよろしいが、値段だけはこの地域価格か。
11月13日(水)の記 友ぞ宝 ブラジルにて
在日本の友人から、ブラジルに来ていると連絡をもらった。 今日の午後に会うことに。
サンパウロのコリアンタウンのコリアンカフェにお連れする。 友はサンパウロ滞在歴もあるが、このあたりははじめての由。
いやはや貴重な体験談を聞かせていただき、話は弾む。 と、賑わっていたカフェも閑散としてきて、そろそろカンバンのようだ。
夕食にコリアン総菜を買って帰るつもりだった。 午後7時前だから、コリアンスーパーはまだ開いているだろうと思いきや。 アウト。 コリアン街はリベルダージ・東洋人街よりだいぶ夜が早いようだ。
4時間ばかり茶飲み話をしていたことになる。 長めの映画2本分の時間だ。 まだまだ話は尽きなかったけれど。
共通の知人について共通の認識を持ち、別の共通の知人については僕の認識を改めさせてもらった。
わが家に電話、今晩はピザの出前はどうかなと提案。
11月14日(木)の記 友ぞ宝2 ブラジルにて
明日はブラジルの休日である。 よって多くの人々は3連休だ。
それもあって今日の午後、パウリスタ地区の邦人の知人を訪ねることにした。 二点ほど聞きたいことがあって。 どちらもあまり愉快な話ではない。
先方から逆に意見を求められる。 日本に引き揚げようとも思うが、最近の闇バイトによる独居老人襲撃が心配の由。
せっかくパウリスタ地区に出てきた。 夕食の支度にはまだだいぶ時間がある。 気力もないが、このまま帰るのにももったいない。 無料の展示でもちびっと見ていくか。
FIESP:サンパウロ州工業連盟ということになるのか、ここのビルでは常時、複数の企画展が行なわれている。 地階では想像上の植物図鑑展をやっている。 そそるテーマだが、ポルトガル語の文字情報を追ったり、立ったまま動画を見続ける気力がない。
メインの地上階では、アフリカの民芸展。 これも逸品ぞろいなのだろうが、暗い場内でいちいちどこにあるのかもすぐにわからない展示品の小さな解説書きを探して読む気力もない。 ざざっと見て出ようとして「岡村さん!」と声をかけられる。
なんといちばん会いたかったサンパウロ在住の邦人の友人だった。 近々会いましょうとメッセージを交わしながら、おそらくお互いに気をつかって延び延びになっていた。 どこか近くで、ということで。
庶民的な店を探して。 ビールとともに諸々の話が飛び交う。 もう一本、あと一本、これが最後で…
話し込むことで思いがけない接点もあり。 それにしてもこうしてこの友と会えるのは、確率的には天文学的とまではいかなくても、なかなかありえない。 摂理だの磁力だのを持ち出した方がわかりやすいかも。
11月15日(金)の記 ブラジルミックス ブラジルにて
家族の友人のアート展があるという。 彼女はLGBTをカミングアウトしていて、その仲間の共同展らしい。
午後から、思い切って行ってみる。 今日は休日。 医療機関と高層アパートの続く一帯で人通りもまばら。 そんななか、異様ににぎわう一角。 そこだった。
中をどうやって歩こうかという人出。 間取りホラーに出てきそうな複雑な建物の各部屋にアートが展示されている。 ずばり男女の性器をあらわした作品が多い。
家人が、人ごみのなかで友人を見つけた。 彼女の入選作2点に案内してもらい、説明を受ける。 コメントに窮すが「バックの深い青がいいですね」と言っておく。
自分の場違い感は否めない。 せめてもう少しイカれた格好をして来ればよかった。 そういう衣装もないけれど。
そうそう、こうした展示や会場はどんな名称なのかを調べて。 ブラジルミックス、とあった。
11月16日(土)の記 悪からお救い下さい。 ブラジルにて
「わたしたちを誘惑におちいらせず、悪からお救いください。」 『主の祈り』より。
まさしく今年の四旬節以来。 ひどい悪意を浴びせられ続けている。
今日は朝から運転である。 土曜だから、平日より交通量は控えめなのが不幸中の幸い。
まさに「受難」「法難」の部類。 運転の際にこのことでカッとなって、事故を招く・巻き込まれる、といった事態になれば、それこそ悪の思う壺だ。
気を静めて、慎重に。
・・・、おかげさまでトラブルもなく今日のお泊り先に到着。
11月17日(日)の記 弱き者の強き味方 ブラジルにて
泊り先から帰宅、急ぎ近所の日曜朝市へ。 大ぶりのアジを買う。
ひと駅、先にある日本語で言ってみると「聖タデオ大聖堂」の正午のミサに行ってみる。 ここは日本のカトリック成城教会の姉妹教会という訳だ(今年11月3日の日記参照)。 一日に何度もミサが行われるのだが、大聖堂が埋まるほどの参列者。
今日のミサのなかでは特に「弱き者の強き味方」である聖タデオについて言及されなかったようだ。
ミサ後の人びとの動向が目を引いた。 壇上にある巨大なイエスの磔像、前方に置かれた聖体顕示台などに触っていく人が群がっている。 フレイザーのいう「感染呪術」の世界だ。 かんたんにいえば、聖なるものに触れてご利益を得ようということになろうか。
同じ系列になる、すぐ裏手の聖ヨセフチャペルのミサでは、これはあまり見られない。 参加者も「聖タデオ」の方がより庶民的である。
聖タデオ信仰の篤さはこれまでも見てきているが、ブラジルの大衆は直感的にこの聖人が「弱き者の強き味方」であることを体得しているようだ。
11月18日(日)の記 イートインスペース ブラジルにて
ああいうモノ・場所を日本語でなんていうんだっけ、と検索してみることが増えてきた。
今日のは…イートインスペースか。 それのある場所は…、ショッピングモールと呼ぶには、だいぶショボい。 雑店舗街とか?
メトロの隣駅に隣接した雑店舗街。 立地はバツグンなのだが、イマイチ盛り上がりを欠きつつ、続いている。
ここの地下の飲食街は7-8軒ぐらい店舗が入るスペース。 その中央にこのイートインスペースがある。 ところが閑古鳥が鳴くにまかせて、とうとう全滅してしまった。
今日、のぞいてみると、新たに一軒がオープン。 スペイン語の店名の飯屋だ。
こちらは一日断食のため、炭酸ミネラルウオーターを購入。 一軒でも稼働していると、だいぶ違う。 中高生ぐらいのグループや、お弁当持参の人がここを利用していく。
消えてしまった店どもを想い出す。
ペルー料理屋とか、パステル屋とか…
11月19日(火)の記 オレンジアイスコーヒー ブラジルにて
ちょいと歩く火曜の路上市へ。 断食のあとは、果物が食べたくなる。
外はかなり暑い。 が、スマホを繰ると28度か。 体感温度は30度以上。
帰路、久しぶりにミナスカフェに寄る。 ・・・アイスコーヒーのオレンジジュース割りを頼むか。 あまり期待しないで。
おや、オーダーした後で奥でジューサーを稼働させる音が。 やってきたのは、オレンジジュースをアイスコーヒーで割った、ぐらいのオレンジの甘さ。 今度はもう少し氷をもらおう。 値段は、あれもこれも日本より割高になったブラジルではリーズナブルだ。
もう少し家に近いといいのだけれど。
11月20日(水)の記 ブラジル立志篇 ブラジルにて
今日のブラジルは「黒人問題啓発」の休日。 身辺を少し整理。 かえって散らかっているか?
先の訪日時、山形寒河江・松田書店フローラ店で買ったDVDコレクションを見るか。 『男はつらいよ』第16作「葛飾立志篇」。 ちょうど発売されたばかりで、ナントこの寒河江がロケ地なのだ。
この映画には奇遇なことが多い。 僕が「花の中三トリオ」時代に同学年ということもあって、当時ファンを自認していた桜田淳子さんが出演。
この映画の公開は…西暦1975年12月か。 僕は中学時代に映画に目覚め、高校時代から邦画にのめり込んでいく。 僕が最初に封切りで見た『男はつらいよ』がこの作品。
しかも、考古学がテーマ! 志望の大学は早稲田の文学部、そして考古学を学びたいと思っていた時だ。
この映画に登場する樫山文枝さんは大学助手、小林桂樹さんは大学教授で、山田洋次監督の母校・東京大学所属という設定だ。 実際の「考古学徒くずれ」からすると、いかにも寅さん映画のための考古学者といった設定の感あり。 『となりのトトロ』の父親の考古学者の方がリアリティを感じる。
僕は大学一年の夏休みから早稲田コネクションで世田谷区遺跡調査会の発掘調査に参加することになる。 当時、この映画の話題となって驚いた。 この映画に登場する発掘現場は、世田谷で撮影されたという。 世田谷区岡本の堂ヶ谷戸遺跡だったと記憶する。 そして、僕も知る大学の先輩が登場する、とも。 山田監督の住まいが世田谷で、お嬢さんが遺跡調査会に参加したこともある縁でと聞いた覚えがある。
ちなみにこれも奇遇だが、堂ヶ谷戸遺跡については拙作『KOJO ある考古学徒の死と生』でもわが学兄・古城泰さんとの関係で言及している。
今回、DVDで特にこの部分は何度かチェック。 背後は「ネコ山」でロングのショットはない。 たしかに面識のある先輩らしき人の若かりし姿も。
現場での役者のセリフは、いまいち現場感覚からズレている印象だけれども。
寅さん映画のロケ地については、ネット上でかなりマニアックなものがあがっているが、さすがにこの発掘現場について言及したものは見当たらない。
ところが、それを検索していて、間接的な知人がこの映画を見て考古学を志した、といった記載に接してこれもびっくり。
映画で映し出されているのは、おそらく縄文時代中期の埋甕。 死産の胎児や乳嬰児を土器に埋葬して竪穴住居の入り口部に据えるという風習だ。
胎児よ胎児 なぜ踊る。
11月21日(木)の記 逆アルデンテ ブラジルにて
家電の備品の購入で、サンパウロのアキバ:サンタイフジェニア街に。 3軒目にして、ゲット。 まあ、予算内で買えた。
ブラジル人たちからもアブナいと言われる一帯。 思い切って少し歩く。
やれやれ、サンベントの大聖堂までぶじ戻れた。 思い切ってどこかで昼食をいただくか。
木曜の定食はスパゲティやラザーニャなどのパスタ系が多い。 外に値段の提示はないが、大型でそこそこ大衆が入っている店をチョイス。
スパゲティ定食を頼むと、チキンつきで?と聞かれて、つけてもらう。 飲み物はオレンジジュースで。
うわ、トマトソースのべっちょりナポリタンだ。 アルデンテの真逆。 これをなんというのか日本語で検索してみるが、一筋縄ではいかないようだ。 「逆アルデンテ」は「もちもち」ととらえているのが少なくない。 「もちもち」ではなく「べちゃべちゃ」なのだ。
ブラジルのパスタ乾麺の表示を見ると「アルデンテに茹でるには」といった記載もある。 が、実際に庶民が食べているのはこうしたべちょべちょ系が多いようだ。
インディオ保護局の前線基地での食事、街道のトラック野郎相手の食堂などのスパゲティを想い出す。
想えば台湾のスパゲティもそうとう柔らかかった。 台湾では朝から外食という家庭が多い。 朝からスパゲティがメニューにあって、いただいてみた。 日本の学校給食のソフト麺を想い出して。
ブラジルの大衆食の豊かさを今さらながら、あらためてかみしめていきたい。
11月22日(金)の記 存在するという演技 ブラジルにて
『AINDA ESTOU AQUI』 今年のヴェネチア映画祭などで受賞して、来年の米アカデミー賞にもノミネート。 ただいま封切り中のブラジル映画で、客の入りも快調の由。
タイトルは「私は今もここに」といった意味。 監督、俳優の名前を見れば、まず間違いのない作品といったところ。
その程度の予備知識だけで、午後から見に行く。 1970年、軍政時代のリオの金持ちの話か… 地味と言えば、地味。 が、どんどん引き込まれていく。
ふだんは観客もまれなミニシアターだが、今日は様相が違う。 今日は後から前席に座高のやたらに高い女性が座り、やむをえず最前列に移動。 中盤ぐらいから、場内のすすり泣きが聞こえてくる。
この映画の見どころのひとつはフェルナンダ・トレスとフェルナンダ・モンテネグロという実際の娘と母にして、いずれも名優の出演。
これには息を呑んだ。 すごい。
邦画『砂の器』の加藤嘉を想い出した。 ちょうどこの映画の公開50周年だ。
なんというか、ブラジルの良心を見たといった想い。 身辺のことで、この国の庶民にやや絶望を感じていただけに。
自分は、自分の信念のもとに、するべきことをしよう、と思いをあらたにする。
母娘の、娘とのニアミスも想い出す。
11月23日(土)の記 アジの干物とランプ肉 ブラジルにて
今日は土曜だし。 家族と外食でもしたいところ。
ところが、台所の事情もあり。 自家製のアジの干物が手つかずだ。 そろそろ食べないとヤバいかも。
という訳で、昼は白ご飯を炊いて。 アジは「まだ」臭みもなく、だいじょうぶだった。
さて、夜は… スーパーの特売で買ったalcatra:牛ランプ肉がある。 それと、これもだいぶ日にちが経ったレモン味のソーセージを解凍したままになっている。 ソーセージもまだいたんではないようで、やれやれ。
牛ランプ肉はスライスして、粗塩だけまぶして焼く。 いやはや、それだけでけっこうなお味です。
11月24日(日)の記 卯月製麺 ブラジルにて
今日は午後から、わが家でワタクチひとりとなる。 とはいえ食事の支度等、とくに不自由もない。
まあ、ひとりだと、こったものを作る気もしないが。 遅い昼食… 昨晩ののこりの牛ランプをあらためて薄切りにしていただいてみる。 やっぱ、おいしい。
とはいえ肉ばかりともいかず。 山形寒河江でいただいてきた乾麺がある。 知る人ぞ知る卯月製麺のもの。 ロゴマークは杵を持ったウサギ。 「卯月」は屋号かと思って調べてみると、創業者の苗字だった。
日本屈指の蕎麦処・山形のお蕎麦であり、ここの麵つゆ付き乾麺のおいしさは先日もブラジルで味わったばかり。 して、卯月製麺の中華そばもあるのだ。
これをいただいてみよう。 ネギにワカメぐらいの添え物ではもったいないけど。 かといって味玉や豚の角煮をわざわざとまでは… シメジ炒めののこりでもいれるか。
これも、つゆ付きで、煮干しベースとな。 うーむ、麺もスープもあとをひくおいしさ。
親類の縁で山形寒河江に通うようになって久しい。 親類のお宅で山形は全国一クラスのラーメン県とはうかがっていた。
とはいえ現地ではおいしい漬け物に日本酒、芋煮、外では日本蕎麦屋でごちそうになっていて、ラーメンを食べ損ねていた。
あらためて検索してみると、山形はデータ的にもひとりあたりのラーメン食数が日本一とある。 といってもこれといった特色のあるラーメンがあるわけでもない、というのが「ミソ」。
ラーメン日本一の山形について、最近の特集記事もあったが「なぜ」がよくわからない。 県内に蕎麦屋が多くあり、蕎麦屋がラーメンを出すようになったから、とも。
・・・そんな説明で、納得できますか?
11月25日(月)の記 今日の樹木カフェ ブラジルにて
今日は午後からお泊り当番。 片道、クルマで1時間はかかる。
目的地の手前にあるサンパウロ大学学園都市で小休止。 今日は学園都市内にある少し値の張るカフェに寄ってみるか。
ここは建物を拡張する際に、樹木を取り込んでいる。 樹冠部は、天井の外。 SNSで「樹木カフェ」として何度か写真をあげたところ、けっこう好評のようで。
値がやや張るので学生らしいのはまれで、いつも教職員らしい年配客中心。 今日はまたいやにがらんとしている。
フェイスブックにさっそく今日の写真をあげる。 と、さっそく在鎌倉の知人から書き込みあり。 そんな応答をしたり、担いできた小冊子に目を通したり。
短時間でもだいぶリフレッシュしたぞ。 おや、頬のあたりがかゆい。 藪蚊に吸血されたようだ。
樹木カフェの玉にキズ。 樹木カフェのキッス。
11月26日(火)の記 イヌカモミール ブラジルにて
一日断食とはいえ、少しは思い切らないとできない。 今日はお泊り先で朝食も準備するが、自分は食卓につかず。
朝のラッシュが少し収まってからわが家に向かう。
今日は灼熱日和。 が、昼から思い切ってひと駅半ほど歩く路上市へ。
お目当ての白菜は食欲をそそるものがなく、明日の路上市を狙うか。 「バカ」安売りのパパイアを購入。
さて、今日はスナック類を食べられないが、サテンに… 先週に続いて、ミナスカフェへ。 三種のお茶のうち、カモミールティーをオーダー。
カモミールの花を想い浮かべる。 僕にはパタゴニアのイヌカミツレの方がなじみ深い。 https://www.youtube.com/watch?v=nmwilHVlOvo あらためてイヌカミツレについて検索してみると、こんなブログがヒット。 https://blog.goo.ne.jp/harada1271/e/6c1f0219a9377e15259ff125379215d6 以下、このブログから。
「イヌ」が名前の頭につく植物は、イヌゴマ、イヌホズキ、イヌハッカなど「役に立たない」という意味で「イヌ」呼ばわりされるという。(中略) 「カモミール」は芳香があってハーブとして利用されるが、イヌカミツレは香りがなく、ハーブとしては役立たずで、やはり「イヌ」カミツレである。
ブラジルでは、生物の呼称の俗称から学名に至るまでの帝国主義的な差別意識を告発する取り組みがあった。 当然、日本でもありそうだ。 「人権」からいくと「イヌ」は当てはまらないかもしれないが、「チョウセン」であるとか。 「バカ」はあったかなとざっと調べると俗称以外では「バカマツタケ」ぐらいしか見当たらないようだ。
誰かとこんな話がしたい。
11月27日(水)の記 玉井乾介さんのこと ブラジルにて
日本時間11月3日にYouTubeで公開を始めた『千住博 南米流転』シリーズ。 https://www.youtube.com/watch?v=JZ3Q4xvkSy8
第二巻までアップして、ただいま第三巻の編集作業中。 その合間に、身辺に散らばる冊子資料書籍類に目を通して、少しは整理のまねごとをしている、つもり。
こんなのが出てきた。 国立ハンセン病資料館の企画展「多磨全生園絵画の100年」の目録。 今年8月の訪日際、離日間際に思い切って行ってきた。 これは僕には必見だった。
アートとはなにか。 毎日のインスタを始め、僕は常に生活のなかで問い続けている。
この目録で特に目を引く記載に出会う。 西暦1960年、多磨全生園で玉井乾介氏という人の尽力により「国立近代美術館所蔵の名作絵画展」が開催されたという。 この玉井氏は岩波書店の編集部に所属されていた由。 担当した本が縁で、全生園に関わるようになった。 その後、一年半にわたって全生園にあった学校の国語教師をボランティアで務めたという。
これはすごいことではないか。 玉井氏のことを検索して、たまげた。 さらにその後、玉井氏はブラジルに渡っていた。 国際交流基金による派遣のようで、サンパウロ大学で日本文化を教えたらしい。 およそ50年前のことだ。
それ以上のヒットは見当たらず、いまとなってはこちらで当時を知る人も出会うのも容易ではなさそうだ。
玉井さんのブラジルでの関心に、当然ハンセン病のことがあっただろう。 僕はブラジルの日本人移民から、日本でも聞いたことのない露骨なハンセン病患者への差別発言を聞いている。 ブラジルの日系社会というのは、皇室崇拝とともにこうした差別を「温存」しているところでもある。
いま、このことを知ることの意味を考える。
ちなみに玉井さんは岩波の月刊誌『世界』の編集長を務めていたようだ。 恥ずかしながらそんなことも知らずに、僕は前世紀、そして今年も『世界』に寄稿していた。
11月28日(木)の記 今日の聖タデオ ブラジルにて
「亜熱帯夜」が続いているせいだろうか。 ただでさえ「永遠の時差ボケ」で睡眠が浅く途切れ途切れなのだが。 ということで、夏バテ状態。
今日は28日。 ここのところ何度か言及している聖タデオ(聖タダイはじめ、日本での呼称は様々)の「縁日」である。 隣の駅(その名もSâo Judas)にある聖タデオ大聖堂で、特にこの日は何度も行なわれるミサにあずかってみよう。
聖タデオのことは、新約聖書にはわずかな記載があるのみで、イエスの12人の弟子のひとりであるということ以外、よくわかっていない。 いろいろな民間伝承があり、イエスのイトコであったとか、イエスのもっとも身近なひとだったとか。 この大聖堂のチラシには彼は殉教したとあるが、それも史実かどうかはわからない。
イエスを裏切ったことで知られるユダと同じ名前も持つため、あえて避けられる存在になってしまったともされるが、そんなところかもしれない。 それがかえって民衆の判官びいき、想像力、信仰をそそったのだろうか。
以前、聖タデオが「敗北者の守護聖人」とされていると紹介した。 「敗北者」とはいかないまでも「忘れられてしまいそうな存在」の「守護」ということなら、これは僕にとってもビンゴ!だ。
検索していくと、19世紀ぐらいから聖タデオ信仰は盛んになってきたようだ。 現在は特にメキシコで人気があるらしい。
この聖タデオに捧げられたカトリック成城教会の主任司祭の書いたものがいい。 なにか書かなければならないが、書くネタがない。 原稿の締切りの朝に聖タデオが「それじゃ、私のことを書きなさい」と語りかけてきたという。 原稿は、聖タデオへの感謝で結ばれていた。
11月29日(金)の記 田中絹代監督作品 ブラジルにて
夜間きちんと眠れていないせいか、早くも夏バテか。 イマイチ気力が乏しい。 が、そうも言っていられず…
今晩、ブラジルの知人が主人公の映画が上映される予定。 夜の外出はリスクも懸念しなければならず、よけいメンドクサイ。
シネマテーカで現在、田中絹代特集も開催中だ。 お目当ての作品の前に、田中絹代を一本見るか。
日本の映画青年時代はそこそこ邦画を見てきたので、大女優・田中絹代出演作品は何本か記憶している。 しかし恥ずかしながら、彼女の監督作品を見た覚えがない。
して西暦1962年制作の田中絹代監督『お吟さま』を見ることに。 これは後年の熊井啓監督のリメイク版を見ている。 しかし主演の女優も気に入らず、見た、ということぐらいしか覚えていない。
うわ、ずばりキリシタンがらみの話だったっけ。 仲代達也が高村右近を演ずる。 信仰よりも、女の命をかけた愛がテーマか。 カトリックでいう愛とは、だいぶズレる方の愛だ。
どちらかというと、陰惨な救いのない話である。 原作は今東光。 田中絹代作品は今世紀になって4K化されて。 そもそもこの田中監督作品の16年後にリメイクされている。 それほど好まれる作品なのか?
ざっと検索してみると、主人公のお吟は実在の人物とされていたり、今東光の創作とされていたり。
10月の津和野巡礼以来、キリシタン、殉教といった関連のものを読んでいる。 カトリック者はこの話をどう見ているのだろう。
シネマテーカはそこそこの入りだったが、上映後の話し声もまるで聞こえない。 ブラジル人たちにブラック日本を堪能していただけたようだ。
11月30日(土)の記 サラスパ日記 ブラジルにて
今日は午前中からお泊り当番へ。 高齢者の付き添いと炊事の世話。
昼食もつくることになった。 白ごはんの残りでもあれば、チャーハンでもと考えていたが、ない。 乾麺でもゆだるか…
食糧棚を見ると、パスタ類もある。 ブラジル産のもので、イタリア製のようなコシは望めないが。
そもそも食欲もげんなり気味の暑さ。 サラスパをつくるか。 お年寄りが気に入るかどうか。
サラスパ… 日本の亡母もつくってくれていたように記憶する。 学校給食にもあったような。 そもそもマカロニサラダの方が先だったかな。
検索してみる… 名称もサラスパ、スパサラ、パスタサラダ。 うわ、日本では「サラスパ」は登録商標になっているではないか。
その起源についての明確な記載は見つからず。 日本生まれということもないようだ。
とはいえ、ブラジルではスパゲティもマカロニも、料理の付け合わせとしてはトマトソースでいためたものばかり。 サラスパ系のものに出会った記憶がない。
さて今日は出先でもあり、アリモノでとにかくつくる。 ゆで卵、タマネギ、キュウリ、赤パプリカ、パセリ。 ツナ缶も開けて。 冷蔵庫にあったケッパーのピクルスの残りを少し刻んで。 これが、いい味を出してくれるだろう。
そこそこに好評でした。
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