1月11日(土)の記 『下下戦記』 (2025/01/13)
『下下戦記』 ブラジルにて
ゲド戦記ではない、ノンフィクションライター吉田司さんの渾身の作品『下下戦記』である。 舞台となる水俣現地では「厄災の書」として長い間、封印されてきたというこの書が単行本とされたのは、西暦1987年。 今回、僕がようやく読み上げたのは文庫版の初版で1991年刊行。
1970年代、吉田さんが当時の若き水俣病患者らと「若集宿」でともに過ごした記録だ。 読み向かうにはかなりの覚悟が入り用で、これまで何度か挑んで読みかけになっていた。
ここのところ、この大著を読み上げることを優先していた。 本日ついに読了。
すごいルポを読んでしまった。 水俣病関係でいえば、いまの僕には去年、再読した石牟礼道子さんの『苦海浄土』よりこの吉田さんの『下下戦記』にこだわりたい。 『下下戦記』文庫版の川元祥一さんの解説から。
「ケガレ」そのものが妄想であるが「ケガレ」が「伝染」するというのは輪をかけた妄想である。しかしこうした妄想による部落差別が今も後を絶たないのが日本人の現代なのである。
伝染病そのものがブラジルでも日本でもリアルで身近になったいま、あらためて考えていきたい。
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