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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2025年の日記  (最終更新日 : 2026/01/02)
4月の日記 総集編 沖田さんの見果てぬ夢のブラジルから

4月の日記 総集編 沖田さんの見果てぬ夢のブラジルから (2025/04/03) 4月1日(火)の記 祈りとアートの場
ブラジルにて


今日は、病院から朝帰り。

この病院は、ブラジルの病院ベスト5に入るという。
たしかに、スタッフも昨日から僕が会った人々は好人物ばかり。

エレベーターがなかなか来ないので、非常階段で降りていく。
と、下からピアノの音が。
ショパンあたりかな。
諸般の事情。

録音ものにしてはナマナマしい。
おや、下のフロアにピアノが設置されていて、患者でもスタッフでもなさそうな女性が奏でていた。
尾崎竜二さんのテレビ番組「街角ピアノ」を想い出す。

この病院、随所に配されたアートも見ごたえあり。
フロントの壁には、ブラジルの著名な現代宗教画家の連作が。
「イエスの癒し」7題。

大きなチャペルが併設されている。
チャペルが先で、それをしのぐ巨大な建築の病棟が併設された感じ。

アート鑑賞と祈りのためだけに訪れてもよさそうな雰囲気。
ブラジルでも日系の病院はアートも祈りも乏しい印象。

さあ、家で作業を再開しないと。


4月2日(水)の記 ライ麦畑で無気力で
ブラジルにて


気合が入らない。
というか、気力がない。

いずれにしても今日は一日断食。

読みかけていた『ライ麦畑でつかまえて』を読む。
恥ずかしながら、この有名な小説はこういう話だとは知らなかった。
タイトルのイメージから、アメリカのどこか田園地帯での若者のロマンス、ぐらいに思っていた。

類似のものでは大江健三郎の『セヴンティーン』を想い出す。
この Rye... の方は検索してみると、ずばり『危険な年齢』という邦訳題もあったとさ。

さて僕が読んでいるのは、白水社の1985年新装版の1986年第三刷。
約40年前のもの。
「天」の部分に一面に茶色い点々が。
気にすると、気になる。

検索すると、大気のホコリや微生物の排泄物などのようだ。
なんとかできないか。

消しゴム…
試すが、非力。
紙やすりがいいようだ。

ポルトガル語でなんというか検索。
200番というのが適当のようだが、これは万国共通かな?

これがありそうな店を何軒かまわって、試行錯誤。
ブラジルの紙やすりは「水やすり」と「木工用」に分けられることを知る。
番号は日本と共通。

200番が在庫切れで400番の「水やすり」を買ってみて、かえって「天」が黒ずんでしまった。
120番の「木工用」でトライすると、そうとうスッキリした。

ライ麦そのものについてもいろいろ調べる。

サリンジャーについても。
これまた恥ずかしながら、デリンジャーについてよりも知らなかった。
その変わり者ぶりに心惹かれる。


4月3日(木)の記 おったま芸ション
ブラジルにて


そもそも頭部の近くにスマホを置き続けていると、電磁波が脳にダメージを与えるというし。
就寝時にスマホを近くに置かない方がいいだろうとは、わかりつつ。

未明にスマホをいじって、目の覚めるようなメッセージが日本からいくつか。
ひとつは、震度にたとえればかなりのもの、予想もしない事態。
しかも、いいか悪いかで言えば吉報の部類。

もう寝てはいられなくなった。
とりあえず起き上がってノートパソコンを開き、取り急ぎの返信。

夜が明けて…

停滞している編集作業を少しだけ進める。

今日からブラジル国際ドキュメンタリー映画祭が始まる。
まずは紙のプログラムが欲しいし。
午後の国際短編コンペ部門の三本立てを見に行く。

短編は、ちょっと…というのがいままでだったけど。
未明のオッタマゲは僕の短編にまつわることでもあるし、という口実もある。


4月4日(金)の記 サンパウロの風倒木
ブラジルにて


午後からドキュメンタリー映画祭、ブラジル国産のコンペ5本立てを見に行く。
まー、ブラジル国内だけでもいろいろなものがつくられているものだ。

入館前に雨をかぶり、館内は空調冷え冷えで風邪が心配。

親族が入院している病院が、ここから徒歩約30分か。
帰路、寄っていくことにする。
パウリスタ大通りに面したトリアノン公園を通っていくか。

雨上がりの夕方の亜熱帯林の重さ。
お。
風倒木だ。
https://www.facebook.com/photo/?fbid=10233737769560977&set=a.3410845544903

昨今の強風豪雨による風倒木による混乱は、なかなかのもの。
わが身内も被害に遭っている。

「風倒木」。
この言葉に接したのは日本で大学に入ってまもなく。
東京世田谷の埋蔵文化財の発掘現場で。

層位が不明瞭で攪乱がうががえる部位を、調査員が「風倒木」だと言っていた。
それまでこの語に接したことのない僕は、考古学者の都合による造語かと思っていたのだ。

ブラジルに移住して、日本以上に実際の風倒木を目の当たりにするようになった。
これが実際に歳月とともにどうなっていくのかを夢想するのはおもしろい。


4月5日(土)の記 おいしいフェイジョアーダ
ブラジルにて


こちらの家族がお世話になってきた、料理の達人としても知られる女性がいる。
その人が仕切るブラジルのナショナルプレート:フェイジョアーダのチャリティ販売が今日、あるという。
持ち帰りのみで、家人がふたつ予約した。

受取り場所まで片道徒歩30分ぐらいかかるが、まあいい運動だ。

フェイジョアーダはワタクチもつくるが、自分では自分のものが気に入っている。
けっこうメンドクサイので、近所の大衆食堂でいただくことがしばしば。
だが、やっぱり自分のものの方が自分の口に合う。

さて、受取り現場で達人とも会える。
わが家族のことをよく覚えて気に留めてくれていて、ただありがたい。

帰宅後、まだ暖かいフェイジョアーダを開けてみる。
ふむ、盛り付けもきれい。
そして、おいしいのだ。
なんというか、まろやかというか。

おいしさの秘訣は…
愛と信仰、かも。

今日は夜の外食もある。
セーブするのがむずかしいおいしさ。


4月6日(日)の記 Day of the Fight
ブラジルにて


これは書きそびれたようだが、自分なりの『七人の侍』の美学を引きずって手がけた『里山の冬の華』(西暦2025年製作、13分45秒)。
https://www.youtube.com/watch?v=cbGbCtjX1MY

これをめぐって思わぬリアクションがあって。
自分なりに自作のオーディオヴィジュアル作品における音のあり方を再考している。

そんなときにSNSでこの作品の存在を知る。
大スタンリー・キューブリック監督の処女作にして自主制作のドキュメンタリー映画『Day of the Fight』。
しかもナントこれがオンラインで見れるとは。
https://www.youtube.com/watch?v=cbGbCtjX1MY

この作品のデータはソースによって異なるが、このキューブリックチャンネルによると西暦1950年製作で12分35秒。

75年前の作品だが、拙作に尺が近い。
あるボクサーの試合当日の一日を紹介する。

これがほぼ全篇に音楽が使われている。
現地音は試合直前のアナウンスと試合中のもののみ。

作曲と指揮はジェラルド・フィールドという音楽家。
調べてみると、のちにテレビシリーズの『ルーツ』や『スタートレック』の音楽を担当している。
どちらも僕は見ていなくて、音楽は浮かばないけれど。

スチールカメラマンとして活躍していたキューブリックの映画処女作がドキュメンタリーで、しかも自身で撮影を担当したというのも興味深い。

キューブリックの音楽の使い方のセンスは、鳥肌たつレベル。
この作品では…一回の視聴ではまだよくわからない。


4月7日(月)の記 イメージのイメージ
ブラジルにて


土日はこっちが控えたが…
今日も午後、ドキュメンタリー映画祭のなかから一本、見ておくことにする。
『Mundurukuyü – A Floresta das Mulheres-Peixe』、
邦訳すると『ムンドゥルクユ 森の魚女』といったところ。

「ムンドゥルク」はアマゾン川の大支流タパジョス川流域に生きる先住民グループの名前。
僕の作品にもこの人たちが登場している。

近年、日本の一部のメディアが「アマゾンの水俣病」と喧伝しているのは、この人たちを取り上げている。
この作品でも現地の金採掘と水銀汚染問題に言及されているが、「水銀の病気」という言葉が使われていて、ミナマタという語は聞こえてこない。

さて、この作品はグループの若い女性三人が、長老たちの語る神話をビデオカメラを用いて記録していく、という話。

人獣婚姻譚などが語られるのだが、それが非先住民の作家によるアニメで表現される。

ネイティヴの言葉で語られる神話の喚起するはかりしれないイメージが、型に押し込められてしまう窮屈さを感じる。

かつて、『ブラジルに渡った浦島太郎』と副題をつけてみた作品に取り組んでいた時。
丹後にある浦島太郎のミュージアムを訪ねた。
そのミュージアムが作成した浦島太郎の動画が上映されるのだが…

当時としては最新の技術を用いたのだろうが、このムンドゥルクのアニメ以上に僕はしらけてしまった。

さて、今日の映画。
長老の話を撮影する先住民の女性たちそのものが撮影されていて。
映画の製作そのものは、ブラジルを代表する巨大メディアグループ。

これまでもこの手のものは、そこそこ見てきた。
部族のメンバーが、その神話を演じてみるようなのはそれなりに面白くもあるのだけれども。

いまの我々が追い付かないイメージの世界をたいせつにしたい、と僕は思う。


4月8日(火)の記 ハンフリー
ブラジルにて


ただいま編集中の作品は、かたりくちがむずかしく、微妙。
ナレーションも練りながらの編集で、先作よりはるかに手間取り、尺としてははかどらない。

そんななか、今日も午後からドキュメンタリー映画祭に。
Humphry Jennings というイギリスの監督の回顧上映プログラムをチョイス。

『London Can Take It!』という1940年製作の作品が気になって。
すでにヨーロッパは第二次大戦に突入。
ナチスドイツの空襲にさらされるロンドンの「日常」の記録だ。

空襲下でも市民は「日常」を続け、敵襲にもしっかり備えている、というお話。
ズバリ国策プロパガンダの範疇だが、空襲下でこれだけの映画を作るというのがすごい。

祖国、当時の大日本帝国は…、
日米開戦前は、名取洋之助による国策対外グラフィック誌等には目覚ましいものがあった。
本土空襲が始まった時期には、後世の僕でも注目するのは、藤田嗣治の戦争画ぐらいか。

東京大空襲のあとには被災地視察に出た天皇の目から焼死体を隠すことには権力側は尽力したようだが、記録とアートはどうだったか。

こうして考えると、黒澤明監督が戦時中から『虎の尾の踏む男たち』の撮影を開始して、天皇の玉音放送の後も撮影を続けて完成させたというのは、驚異かも。


4月9日(水)の記 ハンフリーを掘る
ブラジルにて


昨日、言及したハンフリー・ジェニングスについて検索してみてびっくり。

彼はドキュメンタリー映画作家である一方、シュールリアリズムの画家であり物書きでもあるのだが…

日本語のヒットは少なく、上位は彼の著作の日本語訳本の紹介だ。
いっぽう英語では相当数のものがある。
イギリスを代表するドキュメンタリー映画作家として、その作品を網羅したソフトも販売されていることを知る。

といった流れで、今日は夜の部のハンフリー・ジェニングス回顧上映に。
彼の代表作らしい1943年の英題『Fires Were Started』など短編三本立て。

さて、この作品。
ナチスドイツの空襲に立ち向かうロンドンの消防隊の話。

これがもう、劇映画の世界。
全カットともしっかり三脚をすえた撮影でカット割りもされ、照明もきっちり、同時録音によるセリフもきっちり。

さすがに登場人物はホントの消防隊員のようだが、演技達者ばかりである。

故・佐藤眞さんのいうドキュメンタリー映画の定義、「作り手がドキュメンタリーだというのがドキュメンタリー」を改めて思い出す。


4月10日(木)の記 Listen to Britain
ブラジルにて


本業の編集の方は泥沼を抜け出した、気がする。

さて。
今日も午後からハンフリー・ジェニングス回顧上映を見に行くことにする。
原題『Listen to Britain』という作品を見ておきたい。

日本の音楽家と動画における音楽のあり方についてやり取りをしている時なだけに。
まさしく格好の教材だ。

1941年製作、第二次大戦中のイギリスを「聴きたまえ」という作品。
大英帝国の空をいく戦闘機スピットファイアの爆音。
農地をすすむはたらくくるまのエンジン音。
ナチスドイツの空襲にもひるまず、ロンドンのミュージアムにはランチタイムのコンサートが開かれている…

現場音主義者の僕にとっては、わが意を得たりの作品。


4月11日(金)の記 今日で見納め
ブラジルにて


底なし沼のような編集作業も、ようやく底に足がついた感じ。
昨日も鑑賞中に、思わぬ気付きがあった。

そんなわけで、今日も…
ブラジル国際ドキュメンタリー映画祭は13日まで。
こっちは今日の二つのプログラムを見て、見納めとしよう。

ひとつはブラジルの記録映像作家 Vladimir Carvalho の回顧上映。
フランスに渡ったブラジル人画家 Cicerro Dias の伝記。

次の、国際短編コンペの三本立ても見る。
これで打ち止めにしよう。

かつて日本の若い監督から「オカムラさんは短編がいい」と言われたことがある。
彼が僕の長編をどこまで見ているか、聞いておけばよかった。
「短編もいい」ぐらい言ってほしかった。

夕方のラッシュ時間や夕食の準備もあるけれど。
鑑賞後に近くのお気に入りのカフェで、しばし余韻に浸る。


4月12日(土)の記 土曜でもフライデー
ブラジルにて


今日は夕食にトンカツをつくることにした。

すでに豚のヒレとロースをそれぞれ塊で買って、ほぼ解凍してある。
肉を切って味をつけて、コロモを付けて揚げて…、
なかなかの手間がかかるので、わが家ではごちそうである。

キャベツは朝の時点で千切りにして、水洗いして水切りをしておく。

今日、揚げるのに所用は3時間あまり。
『七人の侍』ノーカット版より長い時間。

日本時代はもっぱら「食べる人」だったが、恥ずかしながらヒレカツとロースカツの違いもよくわからなかった。
一度に両方とも揚げてみると、食べるときもメリハリがあり、甲乙つけがたくでよろしいな。

手料理で家族が盛り上がるというのは、ありがたいことだと思う。


4月13日(日)の記 ソフィアは…
ブラジルにて


日曜だが、日本への急ぎの通信事項が複数あり。

編集作業そのものは、熟成期間とする。

さて。
気になる映画がある。
日曜も見に行くのは気が引けるが、あとがあるかわからない。
いくか。

『Sofia Foi』というブラジルの新作映画。
これを見たうえで、訳し込みがむずかしいが『ソフィアは行った』という意味合いと思っていた。

が、1990年生まれの監督のウエブページを見ると英題は『sofia was』とある。
went ではなく was か。
『かつてソフィアはこうだった』ということか。

ソフィアというサンパウロ大学の女子大学生が主人公。
これまでの住まいを出なければならず、荷物を引きずってサンパウロ大学のキャンパスをさ迷い歩く。
彼女はキャンパス内でタトゥー彫り師として稼いでいるようだ。
彼女の過去の記憶が錯綜する。

フィクションとドキュメンタリーのミックス、と解説にあり。

この大学と学生の生態に興味があっただけに見ておいた次第。
余白が多いというか、思わせぶりなシーンがいくつかあるが、起承転結でいえば「起承」ぐらいまでで切り替わってしまう。

10年以上前になるか、サンパウロの東洋人街が舞台の劇映画を見た。
夜、地下鉄に乗っていた男が、東洋人街の異空間に迷い込んでしまう、という話。
それ以上は思い出せないのだが、余韻余白が今も続いている。

東洋人街もサンパウロ大学学園都市も、僕にとってはワンダーランドだ。


4月14日(月)の記 アジなマンデー
ブラジルにて


昨日の路上市で、アジを買った。
1キロ半ほどと大きめ。

昨晩は刺身でおいしくいただいた。
ふだんはナカオチなので「なめろう」をこさえるのだが、メンドクサくもあり。
のこりは干物にしようか。

塩水にしばらく漬けて。
うーむ、今日は曇天だけど。

日中、そこそこ干して。

夜にいただく。
ただの塩焼きもいいけど、干物はまた別モノ。
家族にこの味を伝えたい。
のこりは、みりん干しにしてみるかな。

前にも書いたかと思うけど、
ブラジルでは魚の干物は基本、自分で作るしかないのです。


4月15日(火)の記 マリア・アントニア
ブラジルにて


マリア・アントニア。
ブラジルの左派系のインテリなら、すぐにピンとくる名前だろう。

サンパウロ市の中心街にこの女性の名前の通りがある。
そこにあったサンパウロ大学の校舎に西暦1968年、左派学生が立てこもり、警察が襲撃。
ひとりの学生が死亡。
ブラジル軍事政権時代の有名な事件だ。

して、マリア・アントニアとは何者か?
意外と調べるのに手間取る。
パラナ州出身の女性で、自分の名前が施されるこの場所に小農園を持っていたことを知る。

事件後にサンパウロ大学は今の学園都市に移転する。
いっぽうこの校舎は歴史遺産として残されて、今ではさまざまな文化イベントが催されている。
僕が一昨日、現在のサンパウロ大学を舞台にした映画を見たのも、ここだった。

今日はずばり『A Batalha da Rua Maria Antônia』、「マリア・アントニア街の闘い」という映画をサンパウロ文化センターで鑑賞。
2023年の映画だが、モノクロ仕様。

55年前の舞台をどのように再現するのか見ものだった。
おや、サンパウロのド中心の僕にもなじみ深い一角が使われていた。

女子学生が主役で、濡れ場(女子学生どうし)まで盛り込まれていて。
製作は、メジャー系。
こちらでは常識だろう事件の背景や経緯を事前にもう少し勉強しておけばよかった。


4月16日(水)の記 灰色エビの正体
ブラジルにて


昨日、火曜特売のスーパーで購入した、直訳すると「灰色エビ」がある。
頭・殻付きでキロ約1500円。

今晩、これでエビチリをこさえよう。

さて、これは日本名があるのだろうか?
学名Litopenaeus vannamei 。
日本名はバナメイエビ、とな。
クルマエビの近縁種として重視されている由。

東南アジアでのエビ養殖はブラックタイガーからバナメイエビに変更されている由。
そうか、このブラジルのも養殖ものか。

して、バナメイとは何を意味するのか?
…どうやらアメリカの動物学者の名前らしいが、このあたりで行き詰る。

そもそもバナメイエビについて以前にも調べたことがあるような気がする。

さてエビは殻をむくのがちと面倒。
ちょっと指を怪我したかな?

水を多く入れすぎた感もあるが、なんとかなる。
鍋が空になりました。


4月17日(木)の記 聖木曜日に
ブラジルにて


聖木曜日である。
午前中は自宅で作業をして…

これに行ってみるか。
https://museuartesacra.org.br/livro-objeto-a-arte-da-encadernacao-a-partir-do-acervo-do-mas/
サンパウロ宗教美術館の、最寄りのメトロ駅の構内にある分館での期間限定の展示。
「作品としての書籍:製本のアート」といったところか。

小規模の展示ながら、地下鉄の構内にこうしたものがあるのがうれしくて。

地上はコリアンタウンが近い。
午後の中途半端な時間でも開いていて、さほど高そうでもないコリアン飯屋に思い切って入ってみる。
ビビンバでも、と思ったが、チャジャンミョンに宗旨替え。

待つことしばし。
尋常ではない容貌のブラジル人の男が怒鳴り散らしながら店にやってきた。
「この店は詐欺だ!」
主張は聞き取りにくいが…、
この男の連れ合いがここで働いていたものの、きちんとサラリーが払われずに店の人間が韓国に行ってしまった、といったことらしい。

店には僕のほかに客が二組。
経営者らしい韓国人の女性が男をなだめにかかる。
これが背後で行なわれているので落ち着かない。

男が凶器を持っている可能性もあるし。

男は椅子に座り、缶コーラを飲んだりスマホをいじったり。
薬物の影響があるのか。

せっかくのチャジャンミョンも…
誰かが通報したのだろう、軍事警察官がひとりやってきた。
男は目を合わせようともしない。

こちらは肝の座った経営者らしき女性に支払いをすます。
ポルトガル語でお詫びを言われるが、ねぎらいの言葉を返して。

なかなか引き取り手のない高額紙幣で支払いをしたのだが、問題の男がすぐ近くにいて落ち着かず、きちんとお釣りを確認しなかったことを後悔。

お気に入りのコリアンカフェで読むべきものを持参したのだが、なんだか疲れてそのまま帰宅…


4月18日(金)の記 処刑の午後
ブラジルにて


今日はカトリック暦で、イエス・キリストの処刑された日。
ブラジルでは国民の休日である。

今年は来週の月曜も国民の休日となるため、連休で旅行、という向きも少なくない。
こちらは静かに過ごすことに。
見ておきたい映画もあるが、やめておこう。

わが家で雑物の整理。
と、午後3時ごろから空は暗く、雨となる。
豪雨となり、何度か停電。

聖書の「イエスの死」の部分を開く。
「昼の十二時から全地は暗くなり、三時に及んだ。」
(「マタイによる福音書」聖書協会共同訳)

そうか、あの時は雨は降らなかったのだな。
停電もなかっただろうな。


4月19日(土)の記 聖土曜日のバナナ
ブラジルにて


今日も基本、しずかに過ごすことに。

昼は家人と近くの魚料理屋に行くことにする。
ムケカと呼ばれる魚を土鍋で煮たブラジルの郷土料理がメインの店。

ムケカに用いる魚介類はエビ、スズキからサメ!までさまざま。
魚介を用いないbanana-da-terra のものを食べてみたかった。

バナナ界も奥深い。
栽培植物の起源を勉強していた頃、バナナは人類最古級の栽培植物、とあったのを想い出す。

さて今日のお目当てのものは直訳すると「大地のバナナ」。
ウィキを日本語にしてみると「プランテン」となっているがこれは初耳。
英語ではCooking banana、これの方がずっとわかりやすい。

生食ではなく調理して食べるバナナ。
以前、市場で買ってみようとしたが「料理がむずかしいよ」と言われてやめておいた。

土鍋でぐつぐつ煮られたものは、味はバナナそのもの。
アマゾンの庶民船で供される食事では、フェイジョン豆の煮汁にこれが入っていたな。

エビやスズキより、半額以下のお値段で堪能いたしました。


4月20日(日)の記 復活の日の『白痴』
ブラジルにて


…、気分転換がしたい。
黒澤明監督の『白痴』をDVDで見直そう。
西暦1951年製作、堂々166分。
かつて台湾で買った中国語字幕版である。

あー、冒頭から沖縄との強烈な関係があったとは!
して、見直すのを楽しみにしていたシーンが…ない?
見落としたか?

何年ぶりに見直しているのだろうか。
あの原節子と久我美子の対峙のシーンなど、いささか現物とは異なるかたちで記憶のファイルに入れていた…

見どころは、たっぷり。
それにしても、たとえば、あの仏間の老婆のシーンは、いったいなんだ?

現存しないというオリジナルの265分版。
奇跡が起こらないかな。
182分版でもいい。


4月21日(月)の記 愛の料理
ブラジルにて


今日のブラジルは、チラデンテスの休日。
西暦2020年のこの日に、グラフィティのスマホ撮りとインスタ上げを始めて、5周年。

さて今日は午前中から連れ合いとこちらの家族の介護で泊まり込みだ。
僕は台所番。

高齢の病人に「おいしい」といってもらえるかどうか。
そもそも、食べてもらえるかどうか。

高層住宅のベランダの、僕の植えたシソ、そして共同菜園に親類が植えたミツバなども用いて。

意外なほどの成功だったようだ。
料理の秘訣は「愛」=「おたいせつ」のこころ、なんちゃって。

いやしという言葉は、だいぶいやしめられたしまった感があるが…
こころをこめた料理で、相手のからだとこころを、いやす。


4月22日(火)の記 インドとまちがえられた地で
ブラジルにて


いったん帰宅して、まだ家人と用足しに。
その帰りに、どこか昼食でもということになり。

スマホの地図アプリを見ると、なんと近くにインド料理屋があるではないか。
平日の昼もやっている由。
とはいえ、こういうのは行ってみないとわからない。

…、あった。
ちょっと見ではインド料理屋ともわからず、スルーしてしまいそう。

「食べ放題」というのもあるが…
とはいえ、チョイスできるものは限定されるようだ。

ふたりとも定食にあたるようなのとラッシーをオーダー。
店員は、聞くとネパール人。

別オーダーのナンもすすめられ、オーダー。
うわ、これだけでも大きい。

そして、定食!
メニューに小さな写真があったが、世の常とは逆で、写真よりずっと多くてゴージャスでは。

僕はチキンカレーをメインにするが、日本人の味覚からすると、あれこれカレー?といったところ。

して、付け合わせが…、
濃いピンクのライス、これは僕の味覚にはイマイチ。
ひよこ豆の煮もの。
インディアン揚げ餃子。

なかなかの量。
歩行がつらいほど満腹になる。

やれやれ、半時間ほど歩いて帰宅。
まずは横にならせていただきましょう。


4月23日(水)の記 沖田さんの見果てぬ夢のブラジルから
ブラジルにて


今週は今日、一日断食をする。

ただいま編集中の作品で新たな行き詰まり、思案のしどころ。

4月23日…
たしかネトフリの『新幹線大爆破』は4月23日配信開始だったのでは?

何本かのシリーズものかと思ったら、2時間強の一本勝負ではないか。
見るか。

ふむ、ナルホド…
「初代」から、ちょうど50年か。
「前作」の故事ももりこんでいて。

映画『新幹線大爆破』には、ただならぬ思い入れがある。
封切りで見たのは、高校2年の夏。
翌年、ほんらい受験生であるべき高3の時に、16ミリフィルムでレンタルを開始されたこの映画をウン万円払ってレンタル、高校で上映会を行なった。

ネトフリ版のクレジットで、「経典」の方のあのテーマ曲は『見果てぬ夢に向かって』というタイトルがあると知った。
これはSPレコードのサントラ盤を購入しているが、そんなタイトルがあったっけ?
高校生の僕はこの曲に「脱出へのパスポート」という曲名を付けていたと記憶する。
「見果てぬ夢に向かって」って、ちょっと…

ネトフリ版を一気に見終えて、いちばんに想うのは、映画版へのサウダージ。

50年前は、まさか自分がブラジルに移住して「こんなこと」になるとは、「夢」にも思いませんでした、沖田さん。


4月24日(木)の記 マハさん 月山
ブラジルにて


ただいま制作中の、1999年に撮影した素材のまとめ。
ラストでふたたび行き詰っていた。

時系列でまとめているのだが、唐突感あり。
加えて、突発でプレッシャーのある事態の撮影で、いわゆる「逆シャッター」をおかしてしまったようだ。
「いわゆる」と書いたが、この語を検索してみるとこっちの意図する用法が見当たらないのだが。
稀にこれをおこしてしまう。
これも意味のあることなのだろう、とも思ったりもするけど。

して今日未明、床についていて妙案を思いついた!
あとはそれに見合う素材の編集が可能か、そしてナレーションを書けるか。

なんだかどっと疲れも出た。
午後から少し「ねかす」ことにする。

読みかけだった原田マハさんの『常設展示室』、さらに森敦さんの『月山』を読む。


4月25日(金)の記 定番の訳
ブラジルにて


日中は雨がち。
用足しでダウンタウンへ。

昼は、外食するか。
少しヤバい界隈にあるカフェとレストランのあいだぐらいの店が気になっていた。
値段は張りそうだが、思い切る。

日替わり金曜の魚料理は大衆店の二倍ぐらいのお値段。
…パスタにするか。

日本でいうミートソースが食べたかった。
いちばん値段控えめな tradicional(英語なら traditional)というのをオーダー。
するとウエイトレスがこれはトマトソースのみですよ、とのこと。

ううむ。
肉付きのもの、これはベビービーフがいちばん安く、ベビーをフンパツするか。
ブラジルの肉屋では牛ひき肉を頼むと、肉種を訊かれることがしばしば。
その類と思っていた。

して出てきたものは、トマトソースがけのスパゲティに焼いたベビービーフの肉塊。
こういうことだったのか。

それにしても、値段だけのことはある。
大衆食堂のものだと市販のトマトピューレ使用感ばっちりだが、ここのはフレッシュなトマトをミキサーで砕いて煮込んだようで、自然な甘みと色味あり。

さてこのtradicinal、「伝統的な」はもう少し自然な日本語にならないかな…
「伝統の味」といったところだろうが。
...「定番」かな。

もうひとつ日本語の「あや」に気付く。
日本でスパゲティといえば「タバスコ」「粉チーズ」が付きものかと。

この粉チーズも本場・本格だと粉ではなく、適当な表現を考えると、「おろしチーズ」である。
この店は小鉢にたっぷり、おろしたのが出てきて、すべて使わせていただく。
食後のコーヒーのサービスもあり。

けっきょくお値段は通常の倍ほどになったが、話のタネはいろいろゲット。


4月26日(土)の記 よごれたガラス
ブラジルにて


こちらの親類の手術は、今日の午後4時からの予定。
祈るしかない。
わが徒歩圏のカトリック教会で土曜午後4時からのミサがある。

ということで、聖リタ教会へ。
ステンドグラスの美しい教会というと、まず僕はここを想い出す。
僕にはステンドグラスに何が描かれているかより、それがひかりをどのように映写するかが興味深い。
今日は特に息を呑んだ。
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ステンドグラスのステンドは「しみをつける」「よごす」という意味も持つことを知った時には驚いた。
「しみ」「よごれ」をつけたガラスを通したひかりの一期一会の美しさ。

ステンドグラスですぐに想い出すのが武満徹さん作詞作曲の『小さな空』。
その2番に、
♪夕空みたら
教会の窓の
ステンドグラスが
眞赫(まっか)に燃えてた

あらためて検索してみると、この曲は西暦1962年に民放の子供向け連続ラジオドラマ『ガンキング』のエンディング曲としてつくられたという。
このドラマの劇中に「南青山教会」というのが登場するそうだが、武満さんが具体的にどこの教会をイメージしたかは、どうもわからないようだ。
武満さんは多摩湖畔で25年にわたって過ごしたが、この曲がつくられたのはそのずっと昔の由。

『ガンキング』は少年漫画雑誌に連載された西部劇らしい。
さすがにこのラジオドラマそのものはネットにあがっていないようだが、原作復刻本は購入可能のようだ。

武満さんはこのラジオドラマの放送開始後、近所の子供たちが自分の曲を歌っているのに接して「はじめての楽しい体験」と語っているという。
いい話だ。


4月27日(日)の記 自宅待機
ブラジルにて


昨日の午後に予定していたブラジルの身内の手術は、開始がだいぶ遅れた由。

こちらには何もできないが、突発事態に備えてのスタンバイの心構え。

とはいえ、アルコールは飲んでしまうので、クルマの運転はできないけれど。

いずれにしろ次回訪日前のブラジル国内遠征は見合さざるを得ないと判断。

決めてしまえば決めてしまったで、先に重荷をまわすがとりあえずラクになりました。


4月28日(月)の記 どっちのICU
ブラジルにて


危篤じゃなくて、基督の方は…
日本での考古学徒時代にうかがったことがある。

集中治療室の方のICUに立ち入るのは、生まれて初めてかも。
通常は付き添い等も不可のようだが、患者の特殊な事情により許可された。

僕が今晩、泊りで付き添うことになった。
病院への立ち入りでのチェックのほかに、ICU棟の出入りもチェックあり。

この病院は、院内アートに注目していたのだが…
ICU棟は個室内どころか棟内にもアートが見当たらない。

個室内にはテレビもあり、ひさしぶりのNHK。
話題の『あんぱん』をちょびっとだが、はじめて見る。

患者は深夜でも叫んだり。
看護師等も不意にやってくる。
きちんと眠ってはいられない。

正直なところ、別の家族の聞いた患者の臨死体験をほうふつさせる発言に興味があったが…
それはなかった。


4月29日(火)の記 病院の楽しみ
ブラジルにて


病院で楽しみなこと、といっても特に不謹慎なことはないかと思う。
正直なところ、自分が患者ではなく、付き添いをした入院患者も自分の肉親という訳ではないので、ある程度の余裕はある。

泊りの付き添いということで、食事はささやかな楽しみとさせていただきたい。
昨晩は集中治療室から食堂に降りて、冷凍食品の弁当を温めたものをいただく。
これにパックに入ったサラダとフルーツが付く。
並、といったところか。

今朝も食堂で、今度はビュッフェスタイル。
パンが三種類、ハムとチーズ、パック入りのフルーツ、コーヒーにミルクにオレンジジュース。
見逃したが、卵料理もあったようだ。
並のホテルよりちょっと下回るかな。

この食堂には絵画がざっと二点あり。
今日のインスタ用に人が途切れた時にスマホ写真を撮ると、背後の女性から「きれいですよね」と声をかけられる。

夜中もそこそこ起こされて、そもそもこっちは仮眠状態だった。
病院内にこじゃれたカフェもあるが、いまは家に帰りたい。

徹夜明けのぽわんとした身心で帰宅。
徹夜なんて、試験前の中高生時代やテレビ屋時代を想い出すねえ。


4月30日(水)の記 病院で読む霊性
ブラジルにて


要員払底のため、今日も午後から病院の集中治療室に泊まり込み。
前回はスリッパを忘れたので用心。

わが本業も追い込まれているので、予断を許さない。
再読のため「犬養光博の宣教と思想、その霊性」のコピーを病院に持参しよう。
大倉一郎さんが2012年に発表されたもの。
サマリーに「この論文は犬養光博の1960年代から2000年代までの著作と社会的活動を考察することによって、彼の働きの宣教学的意義を明らかにする。」とあるが、犬養牧師の1999年のブラジルミッションのことは言及されていない。
もちろんその犬養先生の旅の同伴記録である拙作『消えた炭鉱離職者を追って』シリーズについても言及はない。

ちなみに『消えた炭鉱離職者を追って』シリーズ第一作『サンパウロ編』は5月に東京都下で上映していただく運びとなった。

ただいまサンパウロでこのシリーズ完結編の『アマゾン編』に追われゆきながら、今日も病院泊という次第。




 


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